子宝園

緑ノ池

プロローグ


「このお部屋はね、おにいさんおねえさんがお坊さんになる練習をするお部屋ですよ。だから、皆さんがここを通る時は、うるさくしたり、中を覗いたりしてはいけませんよ。用がない時は、近づかないようにしましょうね」


 はーいと、元気に声を上げる子どもたち。

 私も同じように言いそうだったが、うるさくしてはだめといま言われたんだった、口をつぐんだ。


 大きな錠前のついた扉は、大きい仏壇の扉のように彫刻や飾りが施されていた。私の目線くらいのところに細い木のひごに穴の細かい紫色の網が張り付けられ、網戸のように空気が通るようになっていた。


 きれいだなあ。


 前を通る時だんだん近くなるその扉から目が離せなかった。

 図らずも、扉の中に目を凝らしてしまった。


 子どもが正座をして座っていた。

 確かに、私よりもいくつか年上のように見えた。


 へー、あんなにちいさいこどもでも、もうおぼーさんになるれんしゆうをしているんだ。すごいなあ。まいにちなにをするんだろうなあ。


 その部屋の前を通ったのは初めてのはずだった。

 しかし、私はその子を見たことがあるような気がしてならなかった。

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