キリコとお師匠さん

猫沢さん

 プロローグ 

「どうして、こんなことに・・・てか、ココどこ?」


 

 さっきまで、私は神社のお堂にいた・・・はず・・・。


住宅地の中にひっそりと建っている小さな神社。家が立ち並ぶ中、神社の敷地には、桜、もみじなどの木々が植えられているため、そこだけ、緑が多く、ちょっとした異空間。地域の人々から大切にされ、いつもきれいに掃除されている。夏になると毎月、縁日が開かれる。せまい境内はその日だけ、人でいっぱいになる。



普段は静かで人の気配はない。私、璃子は、昔から、何かあるとココへやってくる。ココへ来ると不思議と気持ちが落ち着くのだ。



今日もそのつもりだった。



私は中学3年生。現在、絶賛引きこもり中だ。とはいっても、食事は家族と一緒にとるし、コンビニや買い物など外へも出る。ただ、学校だけは行けないのだ。



母に呼ばれて、一階へと降りると、そこにはクラス担任がいた。眉を八の字にして、困ったような、悲しむような表情。まるで、本気で心配しているように見える。



「げっ!」



 油断した。母は静かに見守ってくれていると信じていた。いつの間に連絡を取り合っていたのだろうか。私は裏切られた気がした。




「観月、もう気が済んだだろう。そろそろ、戻ってこい。みんな心配しているぞ。」



 諭すような担任の言葉にイラっときた。



『そんな、わけないじゃん!だいたい、私をおだてて、その気にさせていたのは、自分じゃん!』



 私は、担任を押しのけると、素早くサンダルをはいて、外へと飛び出した。



 予想外だったのか、2人とも止められない。



「璃子、まちなさい!」

「観月!」




 2人が呼ぶ声がしたが、私はお構いなしに走った。




『やだ!誰とも話したくない!一人になりたい!』








 気がつくと、璃私は神社の境内にいた。はぁはぁと息をしながら、璃子はお堂の中へ入った。中には小さな古いお地蔵さんがまつられている。石を掘って作られた50cmくらいのお地蔵さん。あちこちかけて、顔の部分も削れてしまっているけれど、それが柔らかい優しい表情に見える。


『ここなら、しばらく1人になれる。』



 何も考えたくなかった。誰にも会いたくなかった。私はお堂の隅っこに、縮まって座った。



『誰も探しに来ませんように・・・』



 抱えた膝に頭をのせて、私は祈った。





 どのくらいたっただろう。どうやら、ひと眠りしてしまったらしい。



『さすがに、もう、帰ったよね、あいつ』



 私は立ち上がると大きく伸びをした。お堂の扉を開いて、一歩外へ出ると違和感があった。




「あれ、こんなに緑多かったっけ?いや、緑多いっていうか、これ・・」



 私は嫌な予感がして、後ろを振り返った。そこにお堂はなく、木々が鬱蒼と茂っていた。



「うそ!なんで森の中にいるの!」





「どうして、こんなことに・・・てか、ココどこ?」




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