第6話


楠木と寝言




楠木


カナカナカナカナと境内のどこかで、ヒグラシが鳴いている。


誰も来なくなった神社の境内の巨大な楠木が憂いていた。


楠木の幹にボロボロの垂が辛うじて幹の瘤に引っかかっている。


誰も掃除をしなくなった境内には蝉の抜け殻が見渡す限り広がっていた。


楠木は見る影もない境内に、


人々が訪れ子供が駆け回り、


学生が真剣な顔で神々に祈ったり、


子供が出来るように願いに来た夫婦に子供が出来てお礼参りをしに、嬉しそうに来た時の笑顔やその子の成長を見守った。


元旦には多くの人々が列を成して1年の安泰を願っていた。


あの頃を思い出す。


そんな人々の賑やかしい営みをずっと見守ってきた。


人の営みを神々は慈愛で見つめていたというのに。


今、お社に意識を向けると忘れられたカミたちの怨嗟の声が地を這うように響いている。


人々はこの声が聞こえないのだろうか。


星降る夜に星がひとつ落ちてきた。

それは誰がの魂の欠片で、

ひとりでサミシイと泣いている、まるで子供のようだった。


この子は罪を背負っている、この子の罪ではない、先祖の罪だ。

あぁこの子の先祖は神殺しをやったのか。


そうかサミシイか、なら楠木が側に居てやろう。こんな事しか出来ないが葉を落として掛けてあげよう


アリ、ガト、


そうかそうか楠木の声が聞こえるのか、これで楠木も寂しくない。


お社から漆黒の手が伸びる。

魂を掴んで社に引きずり込んだ。


カミにあの子を連れていかれてしまった。カミも寂しかったのだろう。これでカミは寂しく無くなったのだろうか。


おや?お社が騒がしくなったな、一瞬の静けさの後お社からたくさんの漆黒の手が伸びて蝉の抜け殻を取り込んだ。


蝉の抜け殻が無数の卵になる。


カミはあの子の記憶を見て何かを作ったようだ。


暫くして卵が孵る。


中から人形が幾つも生まれ、町に飛び出していく。


それを見たカミは手を叩いて喜んだ。


人形が人を襲って魂を抜き取り境内に持ってくると新しい卵が生まれ、それをまた繰り返す。

辺りは卵で埋め尽くされた。


カミが堕ちてしまわれた。


もうあの子の声も聞こえない。


楠木はまた寂しくなった。





寝言



朝晩はだいぶ寒くなった。

背中は暖か、、イヤ暑っいわ。


くっつきすぎだろ。


今、後ろから抱きつかれている。


シングルベッドで2人寝ている。


少し前まで別のベッドを使っていたのに、なぜ?


それにしても暑い。


離れたくても腰に腕を回されて離れられない。


アイツの顔は肩甲骨辺りにある。


最近アイツは寝言でロプと呼んでギュッっとだきしめる。


まぁ、アイツの名前がディアロプスで俺がアロだから、ロプだから前のアイツのメシなんだろうけど。


なんかムカつく。嫉妬なんかじゃねぇからな。


胸のモヤモヤが、晴れない。


「ロプ」


アイツが寝言を言った。


まただ、俺を呼べよ。


最悪、同じベッドで寝てて、違う人の名前を呼ぶなんて信じらんない。


って女子かー、


思わず一人ツッコミ、虚しい。


「ロプ、ごめん」


まぁ、ロプって人と色々あってアイツがここに居るんだろうけど。

アイツは心残りがあるのかなぁ


はァと俺はため息をついた。


「ロプ」


次、寝言でロプったら殺す。


カプ


アイツが俺の背中に噛み付いた。


痛ってぇな、カプッじゃねぇよ。


ガプ


ぐぁ、痛ってぇ


「おい、起きろ」


イラッと来てアイツを起こす。


「ん?なんだよアロ」


低い声がかすれている。


「アロじゃねぇ」


「起き抜けに何、怒ってんだよ」


「いや、俺寝れねぇし、背中、痛ってぇんだけど」


「ん?あぁ齧ったか?悪ぃ、再生ゆっくりだな、あぁそうかちょっと待ててぇ」


また肩甲骨辺りをカプリと噛み付いた。


俺を瞬時に再生と快感が襲う。


あぁああ、ハァハァ


「俺に何やったんだぁ”⤴ん」


「ん?オレの毒を刺したぁ」


「聞き捨てならねぇ、毒って何だ」


「ん?オレの毒だよぉ」


「だから説明になってねぇんだよ」


「あぁ、毒ね、再生の促進剤と興奮剤ちょっとの鎮痛剤と幻覚作用があるのと、お仕事に使う殺す為の毒もあるよぉ」


はぁため息が出る。


「いつからその俺に毒使ってたんだよ」


「ん?初めからだよぉ、当たり前だろ食われて気持ちくなるヤツいねぇだろぉ」


「だよな、俺元々そういう性癖なのかと思ったよ、良かった違った」


「だぁいじょうぶだよ! 」


「おう、そうだよな」


「もう、アロはオレじゃなきゃ勃たなくなったから、そういう毒だからぁ、じゃないとメシに逃げられちゃうだろ」


「大丈夫じゃねぇ、全く大丈夫じゃねぇよ」


「依存増し増しだよぉ、でも良かったよ、この毒、他の地球人に打つと死んじゃうんだもん、アロに出会った時、空腹限界だったんだよぉ、アロに適正あって良かったぁ。


もう少し、寝よっ、眠いよぉ」


「こんな話されて寝れるかボケが」


「ん?、大丈夫だよぉ、オレが触ってあげるから、まだ毒残ってるでしょ


ほら、こんなになってる。


好きに出していいよ」


スゥと寝息が聞こえるのに手は止まらない。


チガウ、ダメ、イキたくない。


アイツが寝ながらカプリと、背中を噛む。


ンッ、ンッンッー...///

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