第3話
報告と回想
報告
~平潟 千紗(ヒラガタチサ)~
平潟 千紗は3等陸尉で、今回の蟲人対策室に配置され、彼らの監視任務に就いている。
あの化け物は蟲人と名づけられた。
災害対策本部が置かれた建物の一室を訪れていた。
「平潟3等陸尉であります」
「入れ」
「失礼します」
作成した資料を一緒に彼らを取り調べをした官僚の和田に渡し、部屋の端に立った。
この会議室には3人が椅子に座っている。
蟲人災害対策本部室トップの高下総理、内閣府の鳥嶋、防衛庁の西条の三人だ。
「被害報告を致します。
最初に発見された蟲人は勢多賀区で、蟲人が現れたのは15時30分頃です。
確認された個体は100体ほどです。
今までに確認されている死者は10万人
蟲人にコンパク(金魄)と言われる金色の5mm程の小さな玉を抜かれ重軽傷で、確認されているだけで意識不明者が7千人います。
既に病院は満床で、町民体育館やアリーナにもベッドを置いていますが、適切な医療を受けていない人が1千人以上はいると思われます。
20023年9月18日
16時15分勢多賀区に自衛隊が到着し掃討作戦を開始。
16時45分掃討作戦を9mm機関拳銃M9にて開始。
全く効果が無いことを確認後、戦闘車両、爆撃機による攻撃
17時40分効果が無いことを確認し作戦中止
19時05分敵個体の減少を確認。
翌10時11分敵個体全滅を確認後、敵を殲滅した者を捕獲。
その者の戦闘スーツ内に人を確認
12時00分蟲人対策本部を設置
12時20分勢多賀区を特区に指定
16時00分に彼らを取り調べ
その内容をまとめたものを資料がこちらにあります」
和田が資料を配る。
しばらく資料をめくる音がしている。
「ここに名前のある彼枝義人はあの事件の生き残りか」
高下が和田に問う。
「はい、その彼です」
「フン、皮肉だな」
西条が鼻を鳴らした。
その後1時間、対策を話し合う。
「では、卵から孵る蟲人をその宇宙人に倒させるしかないんだな」
高下が眉間に皺を寄せてため息混じりに確認した。
「はい、今の所それしかありません、その宇宙人の話によると、妖怪やもののけの類だと思われます。
なので、京都の退魔師に被害の多かった勢多賀区に結界を張り、20メートルの壁を設置する事になると思われます」
その後も話し合いが続いた。
私は和田が報告しているのを立ったまま聞いていた。
回想
~ディアロプス~
オレはぁ、故郷を出ても同じようなことをしてんだなぁ。
故郷で俺は、特殊スーツを着て女が奇主にする為のメスを生け捕りにする仕事をしていた。
教育は数年、字と歴史を習って終いだ。
習いが終わると男は特権階級以外は、なんにも考えず一生寄主調達だけをする。
男のメシは一生に一人しか与えられない。間違って死なせたら星を追放されてしまう。
オレのように。
死なせたオレのメシは、再生に一部位5時間かかるのにオレのために多く切ってくれた。可愛いヤツだった。
この星には切断機がないからな。
かぶりつくしかない、野蛮だが仕方ない。
と思い返しながら次々と蟲人にトドメを刺していく。
蟲人を殺していい分こっちの仕事の方が幾分か楽だな。
コレもハズレ。
今日も蟲人を100体、満月の日にだけ孵る。
蟲人がキリキリキリと声を上げながら、飛びかかってくる。
それを後ろに避けて蟲人が着地した。
瞬間に頭を潰さないように踏みつけた。
特殊スーツの指を細く伸ばしオレの毒で包み鋭くして血が出ないように瞬時に首の神経を断ち切る。
蟲人は糸の切れた操り人形みたいに崩れ落ちる。
「お疲れ様ですディアロプスさん」
迷彩服を着た彼が最後の一体にトドメを刺し終えた時に駆け寄ってきた。
「おぅ、おつかれ」
「お手伝い出来ずに申し訳ない」
「イヤイヤ、無理だろ、このスーツがねぇと、これはオレの一部で出来てるからオレしか使えねぇしよ」
「そうなんですよね」
彼は蟲人の骸の回収係だ。
彼がよろけて骸を踏んでしまい傷口からポロポロと金魄がおちる。
マズイ
落ちた金魄から卵が湧いた。
「ディアロプスさん申し訳ありません」
彼の肩に手を置いてポンポンと叩いて労った。
「いいよ、気にすんなよ」
彼は骸をリヤカーに乗せて焼却炉に運んで行った。
オレは、アロが待つ部屋に向かう。
歩きながら、アロを思い浮かべる。
腹減った。早く噛み付きたい。
オレに食われるために近寄ってくる
アロは、顔をほのかに赤くさせ首筋を差し出す。
それだけで滾る。
アロだけは殺させない、絶対に守りきる。
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