転生したのは妹で俺は妹のチートスキル
ももぱぱ
第一章 転生編
第1話 プロローグ
夏休みも残すところあと1日。俺は妹を後ろに乗せて、自転車で帰宅途中。今日は自宅から少し離れたデパートまで買い物に行ってきたのだ。
俺の名前は『
実際、見た目も相当なものでTVに出ているアイドルよりよっぽど可愛いと思う。最近切った黒髪のショートカットもよく似合っている。俺にとっては絶対に守ってやらねなばならない存在だ。
幼い頃、両親が事故で他界してからは、一層俺に懐いているように感じる。もっとも最近は尻に敷かれている感じもしないではないが。
そんな俺たちがなぜデパートに行っていたかというと、明日は明日香の誕生日なのだ。3ヶ月前から貯めていた小遣いで買ってあげたプレゼントが、自転車のカゴの中で揺れている。
先程から、後ろで上機嫌な鼻歌が聞こえてくるのもそのためだ。女の子に珍しく若干音が外れているが、そこはご愛敬というものだ。
少し大きな通りの交差点で、信号が青になるのを待っていると、明日香が鼻歌を止めて話しかけてきた。
「お兄ちゃん、夏休みの宿題終わってる?」
おっと、上機嫌からの急所付きだ。
「あー、うーんと、今日で終わらせるかな?」
「嘘ばっかり。1日で終わる量じゃないでしょ」
「おっしゃる通りです」
「プレゼントも買ってもらったし、手伝ってあげようか?」
(中学1年生が中学3年生の宿題を?)と思われるかもしれないが、我が妹はめちゃくちゃ頭がいいのだ。それはもう俺とは比べものにならないくらいに。
「いや、それは流石に恥ずかしいかな」
「今さら何言ってるの。どうせ手伝うことになるんだから、今のうちにお願いしときなさいよ」
(ダメだ。勝てる気がしない……)
「そ、そうだね。お願いしちゃおうかな」
青になった信号を確認して、自転車を漕ぎだしながらそう答えた。
その時だった。ものすごいエンジン音とともに、1台のトラックが信号を無視して突っ込んできたのだ。
ブレーキをかけることすらなく、トラックは俺達が乗る自転車にぶつかった。激しい衝撃音の後、一瞬で飛ばされる2人と1台。地面にぶつかるまでのほんのわずかな時間に、色々な考えが浮かんでは消える。
(何が起こった?)
(なぜ空中に浮いている?)
(なぜ視界がぼやける?)
(!? 妹は? 明日香はどうなってる?)
無我夢中で首をひねり後ろを見る。頭から血を流し、遠くへ飛ばされる明日香と目があった。その目は恐怖と絶望に染まっていた。
「明日香!」
とっさに手を伸ばす俺。しかし、その手は届くことはなく、無情にも身体は地面に叩きつけられる。薄れゆく意識の中で俺は必死に祈った。
(俺はどうなってもいい。誰か、誰か明日香を助けてくれ。もう、身体が動かない。目が見えない。自分が死ぬのは仕方がない。でも、明日香だけは…。あすかだ…け…は……)
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