転生したのは妹で俺は妹のチートスキル

ももぱぱ

第一章 転生編

第1話 プロローグ

 夏休みも残すところあと1日。俺は妹を後ろに乗せて、自転車で帰宅途中。今日は自宅から少し離れたデパートまで買い物に行ってきたのだ。


 俺の名前は『ヒイラギショウ』15歳。中学3年で受験生だ。妹の『明日香アスカ』は12歳。中学1年生だ。決してシスコンというわけではないが、我が妹は本当に可愛い。


 実際、見た目も相当なものでTVに出ているアイドルよりよっぽど可愛いと思う。最近切った黒髪のショートカットもよく似合っている。俺にとっては絶対に守ってやらねなばならない存在だ。

 幼い頃、両親が事故で他界してからは、一層俺に懐いているように感じる。もっとも最近は尻に敷かれている感じもしないではないが。


 そんな俺たちがなぜデパートに行っていたかというと、明日は明日香の誕生日なのだ。3ヶ月前から貯めていた小遣いで買ってあげたプレゼントが、自転車のカゴの中で揺れている。

 先程から、後ろで上機嫌な鼻歌が聞こえてくるのもそのためだ。女の子に珍しく若干音が外れているが、そこはご愛敬というものだ。


 少し大きな通りの交差点で、信号が青になるのを待っていると、明日香が鼻歌を止めて話しかけてきた。


「お兄ちゃん、夏休みの宿題終わってる?」


 おっと、上機嫌からの急所付きだ。


「あー、うーんと、今日で終わらせるかな?」


「嘘ばっかり。1日で終わる量じゃないでしょ」


「おっしゃる通りです」


「プレゼントも買ってもらったし、手伝ってあげようか?」


(中学1年生が中学3年生の宿題を?)と思われるかもしれないが、我が妹はめちゃくちゃ頭がいいのだ。それはもう俺とは比べものにならないくらいに。


「いや、それは流石に恥ずかしいかな」


「今さら何言ってるの。どうせ手伝うことになるんだから、今のうちにお願いしときなさいよ」


(ダメだ。勝てる気がしない……)


「そ、そうだね。お願いしちゃおうかな」


 青になった信号を確認して、自転車を漕ぎだしながらそう答えた。


 その時だった。ものすごいエンジン音とともに、1台のトラックが信号を無視して突っ込んできたのだ。


  ブレーキをかけることすらなく、トラックは俺達が乗る自転車にぶつかった。激しい衝撃音の後、一瞬で飛ばされる2人と1台。地面にぶつかるまでのほんのわずかな時間に、色々な考えが浮かんでは消える。


(何が起こった?)


(なぜ空中に浮いている?)


(なぜ視界がぼやける?)


(!? 妹は? 明日香はどうなってる?)


  無我夢中で首をひねり後ろを見る。頭から血を流し、遠くへ飛ばされる明日香と目があった。その目は恐怖と絶望に染まっていた。


「明日香!」


  とっさに手を伸ばす俺。しかし、その手は届くことはなく、無情にも身体は地面に叩きつけられる。薄れゆく意識の中で俺は必死に祈った。


(俺はどうなってもいい。誰か、誰か明日香を助けてくれ。もう、身体が動かない。目が見えない。自分が死ぬのは仕方がない。でも、明日香だけは…。あすかだ…け…は……)

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