1-4 月の子
ピーコック・リキュールの別室のソファに少女寝かせて、自分は椅子に背を持たれ眠りについた。
セカンドダイブをしてから、夢は見なくなった。
人間の脳についての仮説がある。
よく人間の脳は潜在能力の10%しか引き出せてないという誰もがよく知ってるこの仮説。
それは部分的に脳を刺激した際に何も反応がなく、用途が判明していない場所があるからだ。
サイレントエリアと呼ばれるこの場所に元からある脳機能の部位を移植し、さらなる人間の能力の解放を目指したのがダイブ技術だった。
しかし、今は有象無象の怪物を生み出すばかりの技術になっている。
ダイブ技術を研究したのが悪いことなのではない。
科学を、研究を、発明をどう使うかは、
それを扱う人間達の思想だ。
この少女にどんな思想でダイブ技術を備えたかは分からないが、起きたら話を聞いてみるしかない。
今は眠ろう。
「ねぇ、おじさん起きてよ。」
耳元に入ってきた声で覚醒する。
少女が俺の椅子を揺らしながら呼び掛けてくる。朧げな目で時計に目をやって6時間程眠っていたみたいだ。
「ね、おじさんがガラン・グレイでしょ?
その顔の傷と不思議なボックス、それはおじさんだけの力で、お母さんはあなたを探してた。」
「母親は俺を知っているのか。君と母親の名前は?」
「うん。私はルナ・トリアーナ。お母さんは、アリサ・トリアーナだよ。」
「そうか。大きく・・・なったな、ルナ。」
アリサ、君は生きてたんだな。
15年前に俺がオアシスから出ていった後も。
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