第17話 木村の夜食

嬉しい。嬉しい。

学校でも一緒の時間が作れる、なんて。

友達にはバレるけど、仕方ない。

リターンが多い。多すぎる。

あらがえないでしょ、こんなの。

リスクはどう?どうかな?

わからないけど、死守しなくては。

お弁当だけは、絶対に。


「なにへんな顔してるの」


「してない」


妹からの問いかけを雑に済ます。

両親は調理の最終工程に入った木村を見てる。

わたしも椅子に座ってみてる、んだけど。

いい。

飽きない。

うちのキッチンに立つ木村。

いい。

すごくいい。

写真撮ったら怒るかな?


「ほんとに手際がいいな、木村君は」


「私より上手いんじゃないかしら」


「プロっぽさあるよね、先輩」


家族が色々話してる。

木村の印象はなかなかにいい。

それも嬉しい。

ちなみにプロだよ、木村は。


「ねぇゆい、ほんとにご迷惑じゃないの?」


「お弁当は、だいじょうぶ、だと思う」


両親とは、すでに話しを詰めてある。

自費で毎日作ってる、と聞いてたから。

その費用を受け持つ予定。

そもそもお弁当は木村の提案だ。

だから、大丈夫なはず。

問題は、そっちじゃない。


「メイのも作ってくれるって、優しいね先輩」


それは初めて聞いた。

え?いつのまに?

人見知りの定義、とは?


問題、増えちゃった。

増やさないで。

今日はいろいろあって。

脳がもう、ヤバイ、のに。


「とりあえず、頂いてみてからだな。といってもみた感じ、食べなくてもよさそうだが」


「メイは、食べてみたい!せっかくだし食べようよー」


「そうね。そのあと、ちゃんと聞いてみましょ」


「ああ、そうだな」


「?」


疑問符を浮かべる妹と。

敷居をただす両親。


そう、お弁当はただの通過点。

いやお弁当も大事、なんだけど。

本題は、その後。


アシュリーちゃん。

大丈夫だよね?

いけいけごーごーでいける?

いけるかな?

ちょっとこわくなってきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る