死んだ息子にお命日プレゼントを渡そうと思う

終電宇宙

第1話

「ハッピーデスデイトゥーユー♪ハッピーデスデイトゥーユー♪」

一人で陽気に歌いながら、ろうそくの付いたホールケーキを運んでいく。

「ハッピーデスデイディアたかしー♪ハッピーデスデイトゥーユー♪」

運んでいたケーキをテーブルに置いて私は盛大に拍手した。

真っ暗なリビングの中でケーキのろうそくだけが光っている。



「たかし!お命日おめでとうー!」

私はクラッカーを鳴らした。

「お母さんびっくりだわー。もうあれから一年経つのねー」

私はしみじみとそう言った。

時の流れと言うのは本当に速いものだ。

息子が死んでもう一年。

本当にあっという間だった。



「私が今死んだら、あの世ではたかしの方が一歳年上ってことになるのかしら?本当に不思議ね。こっちでは私の方が二十五歳も年上だったのに」

部屋の中が静かにならないように私は独り言を続けていく。



「あ、そうだ。ふふふ~。お命日プレゼントを買ってきたのよ~。なんだと思う?じゃじゃーん。兵隊のおもちゃよ!」

そう言って私は包装された小さめの箱を取り出す。

「たかし、兵隊のおもちゃを集めるの好きだったものね。ごめんなさいね。あの世に持っていく方法がわからないからとりあえずここに置いておくわね」

私はその箱をテーブルの真向かいの空いているスペースに置いた。



「って、プレゼント渡すよりも先にまずろうそくの火を消さないとよね!

はい、それじゃあたかし、ふぅーってして」

と私は言った。



部屋が静寂に包まれた。

当然たかしは死んでしまっていないので、火は私が消すことになる。

私は少しむなしい気持ちになりながら、大きく息を吸った。



けれど、ろうそくの火は私が息を吹きかけるより先にひとりでに消えた。

「……たかし?」

何も見えない部屋の中で、私の声だけ響いた。

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