第157話 閑話 女神様達の夕食会①

『おぉ、今日はいちだんと豪華で美味そうじゃねぇか。』


ダルシュテル大陸を創造する女神達が住む異空間にある神殿。


自身の本日の勤めを終え、最近恒例になった6柱の女神達が集っての夕食会が行われている一室に入ったヴァルストーリアは、テーブルの上に並んだ料理とお酒を目にして嬉しそうに声を上げた。


『見て見てヴァルストーリア。ついにお酒、沢山お供えしてもらえたよー!』


両手にお酒の入った酒杯を掲げながら答えたのは、ドワーフのモデルとなった女神でもあるイストルディア。


『新しく手に入れた調理器具で作ったという食事も沢山あって美味しいですよ。』


ホーラレイヤがフォークとナイフを使いながら優雅な手つきで串焼きを食べている。


串焼きの意味がねえじゃん、とヴァルストーリアは内心ツッコミながら、自身も大きな肉の塊が3つ刺さった串焼きにかぶりつく。


『こりゃあ、うめぇな。エールもキリッとしてて良い。』


『だよねだよね!サクラの世界ではビールって言うらしいよ。異世界のお酒はアルコール度数が高くて美味しいよね!これが毎日飲めたらなぁ。ダルシュテル大陸のお酒はあんまり強いのがないからさ。』


イストルディアの言うようにダルシュテル大陸にもエールやワインはあるが、あまりアルコール度数は高くなく、ドワーフ族のモデルともなった彼女には物足りないというのが本音のようだ。


『だからサクラさんの調味料セットに飲めるお酒を沢山入れておいたんですよぉ。召喚した人間に元の世界の物を持たせてあげることは出来るのに、私達が欲しい物をここに召喚することは出来ないという残念な決まりが有りますからぁ。』


『サクラのような娘ならお供えしてくれると思っての確信犯が何を言う。残念ながら女神の中にもメガリスの様なのがおるからのぉ。何でもここに召喚出来てしまっては大変なことになるのは目に見えておるわい。』


日本酒と燻製機で作られた肴がお気に召した様子なティアデルは、笑いながらペミネルラの方を向く。


『だって以前、世界の歪みに巻き込まれてこの世界に来た人間が供えてくれたお酒がすごぉく美味しかったのは皆だって覚えていたでしょう?』


『懐かしいですわ。強いスキルはいらないから、うちの店のお酒をいつでも飲めるようにしてくれと頼んでいた方でしたわね。何年前になりますかしらね。』


『この世界1の酒屋になってやるぞーって言ってた人でしょ!そのお酒で店を開いて大繁盛。家族も出来て幸せに暮らしてたね。その人が毎日お供えしてくれるお酒がすごぉく美味しかったのは今でも覚えてるよ!』


『そんな事があったんだ。』


『100年近く前の話じゃからな。イシュタルウェヌスはまだここに居なかったから知らないじゃろうが、昔から希に巻き込まれる者がおってのぉ。その度にこの世界でなるべく不自由なく過ごせるようにして送り出すのが儂等の勤めでもある。本当は元の世界に戻してやれたら良いんじゃが、生き物の異世界移動は思っている以上にその体に負担をかけるから何度も出来るものではないんじゃよ。ほれ、これもお食べ。』


『サクラさんはおバカな女神のミスに巻き込まれてしまわれたので、より丁寧におもてなししたんですのよ。』


『そういや、サクラが巻き込まれた時にそのおバカな自愛の女神に召喚された人間はどうなったんだ?』



ヴァルストーリアが他の女神に聞いた。


両手に串焼きを2本ずつ持ちながら…。

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