第49話 閑話 関所にて
「隊長〜良かったっすか?あの人達通して。」
「私は大丈夫だと思うけどね。ノベルディアンの連中とは纏っている雰囲気が全然違う。嫌な感じはなかったぞ?」
「マリーが大丈夫だって言うなら大丈夫だろう。彼女の感が外れた事は今まで無いしな。それに大丈夫だと思ったからお前さんも何も言わなかったんじゃないのか?」
サクラ達が関所を通り抜けた後の詰所では彼女達の話で持ち切りだった。
「俺、ケオトートティーガを生きてるうちに拝めるなんて思っても見なかったよ。しかも黒い毛の子供まで!」
「それにあの通常と色の違うスライムとクロスアラネアも普通じゃないよな。ピンクのスライムなんて聞いたことないよ。」
「ノベルディアンで冒険者してた事もあるマリリンさんも知らないんじゃあフィニに頼るしかないかねぇ。」
「あ、隊長チェリちゃん帰って来たっすよ!何か持ってるっす!」
4人が話しているところへ先触れを出しに行っていたマイトの相棒、青い鷲の様な魔物ブルーアギラのチェリが帰って来た。
足にはカゴの様な物を持っている。
『クウェー』
「おかえりチェリ。ご苦労だったな。このカゴはどうした?うん?
チェリが持って来たカゴを受け取りながら皆で中身を確認する。
「ママンゴの実じゃないか!こんな高価なもんを人数分かい?随分太っ腹じゃないか!」
「この果物ってそんなに高価なんですか?」
「死の森の奥地になってるもんでね、1個5銀貨。状態が良いから7銀貨物かもしれないねぇ。」
「7銀貨…安宿なら1週間泊まれる額っす…」
「あの面子なら死の森でも問題ないだろう。というか、町で死の森の素材を買取に出すのかねあの子?」
「ノベルディアンでの話を聞く限りあっちじゃ売ってないだろうからそうだろうね。ノベルディアンの奴等は惜しい事をしたね。ママンゴの実なんてノベルディアンの冒険者でも早々持ち帰れる代物じゃないってのに。」
「でもあの子自身がこの果物の価値を知らないんじゃあ…」
ナバスの考えは当たっている。
サクラの鑑定では高値で取引されると出ていたが金額までは出ていない。
サクラ自身は1個2銀貨、元の世界の2000円くらいで売れたら良いなぁという認識である。
4人は顔を見合わせ大きく溜息をついた。
「その辺も含めてギルマスにも気にしておいてもらおう。この町では無いだろうが、正しい価値を知らねば悪どい商人やギルド職員に買い叩かれる事もあるからな。」
「そうだね。そういう冒険者のいろはを教えるのもこの町の役目さね。ん?どうしたナバス?」
マリリンの声にマイト達がナバスの方を見ると伝言板を見ながらナバスが苦笑いをしていた。
「いや、あげた物が不安だったら毒など入って無いことはフィニの鑑定スキルで見てもらえれば良いんじゃないかってさ。」
「俺が鑑定スキル持ちなのバレてるっす…」
「じゃあ、サクラも鑑定持ちか?」
「でもあの子を鑑定したっすけど、数値は平均、スキルは火魔法、探索、クラフト、クリーンの魔法だったっすよ?!」
「クリーンの魔法も十分すごいけどな。でも大したこと無い奴って捨てられたんだろ?遺産で揉める位ならそれなりにいいとこの出だろうあの子?」
「じゃあ、クリーンの魔法は後天性って事じゃないかい?良いとこのお嬢さんじゃクラフトや火魔法とかも使わないだろうしね。でもそうなると鑑定持ちはあの子じゃないんだろう?」
「従魔の誰かかもっす。従魔は鑑定弾かれて見れなかったんすよ…。」
「そりゃあ俺らのレベルじゃSSランクのケオトートティーガは鑑定出来ないよなぁ。スライムとかも鑑定出来なかったのか?」
「そうっす。4匹みんな鑑定弾かれたっす。」
「やっぱりみんな只者じゃないんだろうな。そんな従魔に愛されるテイマーか。同じテイマーとしてはちょっと羨ましいな。」
「とりあえずあの従魔達を怒らせる様な事をしなきゃ大丈夫だろう。どんなに強い従魔をテイムしていても冒険者初心者なのには変わりない。しっかり面倒見てやれば良いのさ!」
「マリリンさんは豪快というか楽観的というかっす…」
「まぁ、要観察って事で。せっかくなら食べようぜ7銀貨の高級ママンゴ!」
ナバスの言葉に皆が笑いながらも全員でママンゴを堪能した関所の騎士達。
彼等は知らない。
鑑定スキルで鑑定された際にサクラのスキルが女神達の力により偽造され、平凡値にしか表示されない事を…。
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