巻き込まれた異世界でモフモフ達と楽しい生活〜あれ?勇者達より良い暮らししてない?!〜

太縁華

第1話 巻き込んだのに捨てるだって⁉

『この子誰よ~。こんな子、私は呼んだ覚えはないわよ~』


全体的に白く、煌びやかな空間。

豪華なソファーに腰掛け、煌びやかに着飾った姿の女性が気怠げに私に言った一言だ。


私は九重桜(ここのえさくら)23歳。祖母の葬儀終わりに遺産相続で従兄弟達に絡まれていたはずが、気がついたらこの場所に居た。従兄妹達と共にだ。


私の両親は私が5歳の時に交通事故で亡くなった。従兄妹の両親は幼い私が可愛そうだから引き取り育てると言ってくれた。が、それは保険金が目当てで私に払われたはずのお金を手にすると態度を一変させた。


それを不憫に思った祖母が私を連れ出し、山奥のど田舎にある村の祖母の家で育ててくれた。ど田舎で唯一の商店を営んでいた祖母の家はいつも賑やかで、店の手伝いをしていた私は近所のお爺ちゃんお婆ちゃん達に可愛がってもらった。


大学を出た後に祖母の家に戻り、商店を継ぎたいと言った時は村の皆が喜んでくれた。


歳だった祖母が眠る様に亡くなる最後を看取ったのが数日前。葬儀後に祖母の遺言書が見つかり、[ 遺産を全て九重桜に相続させる ]という事が分かった途端、納得がいかないと従兄妹に掴みかかられていたはずが…の今である。


『私が呼んだのは勇者と聖女の資格があるそこの2人よ〜あなたは呼んでないわ〜!』


そう言われても…である。


さっきから『私が読んだのは2人だけ、私は失敗なんてしないわ』とか何とか1人騒いでいる女性はメガリスという、《美と美しさと慈愛|》の女神様らしい。


《美と美しさ|》って同じでは?と私は心の中でツッコミを入れた。


彼女の取巻きみたいな女神達が従兄妹達にあなた方は選ばれし類まれなる才を持った方々なのですよなどと持ち上げながら話している内容から察するに、これは従兄妹達が異世界に勇者召喚され、私はそれに巻き込まれたであろう事が分かった。


なんてはた迷惑な…。しかも、メガリスとか言う女神はなんか面倒臭そうな印象の女神だ…。思わず様付辞めちゃう位には残念そうな女神である。


『と、とにかく勇者と聖女の資格がある2人には私から役に立つスキルと加護を授けるわ。装備品も必要よね。王にも勇者達が行く事は神託を出してあるわ。では早速あちらで準備しましょう。』


そう言うとメガリスは立ち上がる。


「あのー。私はどうなるのでしょうか?」


そこまでほぼ無視されてた私は慌てて声を掛ける。このまま放置とか困る以外の何者でもない。


『私は知らないわ!あなたは呼んでいないもの!』


「でも実際私は巻き込まれた訳ですし…」


関係無いのに巻き込んだのだ、勇者達のようにとは言わないけどある程度の対応はしてもらえるのがこういう異世界ものの定番ではないのかい?


『私は巻き込んでなんてないわ!あなたが勝手に巻き込まれたのでしょう!?私の様なこの世界最高位で優秀な女神が巻き込みなんてする訳がないじゃない!』

メガリスが顔を赤くしながら声を上げる。



なんて勝手な言い分だ…。


「優秀なら勝手に巻き込まれたなんて事態がまず起こらないでしょうに…」


『な、なんですってえぇ~』


メガリスが真っ赤な顔でこちらを見る。しまった。余りにも残念な言い訳に無意識に声に出してツッコんでいたらしい。


『ちょっと!そこの獣の!あんたよちびっ子!!』


メガリスがワナワナと震えながら部屋の隅にいた少女に声を上げる。突然呼ばれた少女はオロオロしながらメガリスの前に歩み出る。しゅんと垂れているが大きめのモフモフの耳に大きくフサフサな丸っこい尻尾。狐の様な特徴を持つなんとも可愛らしい小さな女神様である。


『その者を死の森の奥深くへ送りなさい!…きっと、私の世界でと〜っても素敵な経験が出来るでしょう。』


メガリスは目は全く笑っていないが満面の笑みを浮かべて言うとさっさと部屋から出ていく。


「死の森だって!名前からしてヤバいじゃん!ご愁傷さま〜。」


「俺達は選ばれし者だ!やっぱりお前みたいな奴より俺達のが優れていたというわけだよ、理解出来たかい?死の森とやらで元気でやると良い、出来ればの話だがねえぇ。」


従兄妹達はニヤニヤと笑いながらメガリスの後を追う。取巻きの女神たちもクスクスと笑いながら部屋を出て行く。


部屋に残されたのは私とオロオロしたままの狐耳の女神様だけ…。


死の森…どうやら私は名前からして物騒な場所に身ひとつで送られ…いや、捨てられるらしい。



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