第48話
「悟、今日は私の事だけ考えて」
そう言った可憐は僕の事をギュッと抱きしめた。可憐も美鈴と同じように、他の子達よりも時間が取れなかったためにこうして、二人きりの時間を作っている。
今は、彼女の家にお邪魔させてもらっている。美鈴の家に泊まった後にすぐこっちに来たから罪悪感が心の中で渦巻いている。
だが、鏡花と彼女たちの間には何か約束事があるようで「悟は何も気にしなくていいの。悟がいたい子と一緒にいればいいわ。悟は私達を奴隷のように扱っても構わないから」とこんな一種の脅迫めいたことまで言われてしまった。
一体、僕はどうすればいいんだと思わなくもなかったが彼女たちの中では決定事項のようだったので僕が何を言っても変わらないだろうからあきらめることにした。
「悟、私はね。悟がいない間、ずっと学校で悟の事待ってたんだ。悟が使ってた机に座ってずっと、ずっと悟が来るんじゃないかってそう思って待ってた」
「ごめんね、可憐」
「いいの、私が悟の事を知らなさ過ぎたせいだから。私ばっかり悟に知ってほしくて、それなのに悟の事情は全然知らないままで。私の方がよくなかったって思うから。だから、これからはずっと、悟の事を見てるから。離さないから。悟の事を知らないなんてことがないように」
ぎゅっと抱きしめてくる可憐の腕の力が少しだけ増した。そして鼻を僕の胸に押し当てて、クンクンと匂いを嗅ぎ始める。
そして........
「........悟の匂いがあんまりしない。あの生徒会長の匂いばっかりついてる」
「ごめん。さっきまで美鈴の家にいたから」
「……むぅ。わかってるけれど、納得できない。やっぱり私だけ抜け駆けしちゃった方がいいかな。でも他の奴が黙ってないだろうし。今の私じゃあの鏡花とかいう女とか桜、祥子にも経済力では対抗なんてできないし。はぁ、面倒臭いな。今は、この現状を受け入れるしかないか」
ぶつぶつと僕の腕の中で可憐はそう呟いていた。僕は顔を引きつらせながら何も聞いていないふりをするしかない。
「ねぇ、悟」
「な、なに?」
無意識的に何かまずいと察した僕は、身構えそうになってしまう。この雰囲気は、昨日の夜の美鈴と同じ雰囲気なのだ。
昨日........いや、今日の朝方まで続いた行為は僕が搾り続けられるというもので辛くはないが、ものすごく疲れるのだ。
「悟の事を今から、私の匂いに染め上げてもいい?私、悟があの生徒会長の匂いになっているのが許せない」
「……いいよ、分かった」
でも、僕はそれを受け入れる。彼女たちに優劣や不平等を押し付けるようなことをしちゃいけないから。
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