第37話

 それは突然の事だった。私がいつものように悟が来るはずもない学校で悟が使っていた机に顔を引っ付けてうつ伏せで寝ていた時のことだった。


 スマホが振動したのだ。


 友達の少ない私に連絡をしてくれるのは悟のおかげで出来た由美子や、京子くらいでそれ以外は基本的にはいなかった。その由美子や京子も私が失意のどん底にいることを知っているためかそっとしておいてくれているからメッセージはあまり来ない。


 メッセージを返す気力もなければ、読み気力すら最近はなかった私だったが、何故だかそのメッセージを見るために久しぶりにトークアプリを起動させた。


『お兄ちゃんは生きてるよ』


 ...........え?



 その簡素で飾り気もないメッセージが、悟を探すという名目で立てられたグループラインに投下されていた。


 目を疑った。こいつは何を言っているんだ。ついに血迷ったか。それとも幻覚でも見ているのだろうか。なんて思ったが、私は縋る思いでメッセージを返そうと思ったが私よりも早く返した人がいた。


「それは、本当なの?」


 あの生徒会長だった。


 最近は前のような凛々しく、誰をも付き従わせるようなカリスマ性は失われており、絶望したような顔をしながら学校へと通っているという噂は耳にしたくなくても聞こえてきた。


 あの生徒会長もきっと縋る思いでそのメッセージを送ったことだろう。


「本当。私はお兄ちゃんに会った。お兄ちゃんが私の入院している病室まできた。信じるか信じないかはあなたたち次第だけれど。まぁ、お兄ちゃんは、あなたたちのところにも行くみたいだし、その内分かると思うけれどね」


 そう言ったっきりあの女はそれ以上何もメッセージを返さなかった。


 当然、私は悟が生きているのならば今すぐにでも会いにいきたい。


 あの女の言葉を信じるのなら悟はそう遠くはない未来で会うことができるだろう。だが、私は待つことなんてできるはずがない。私のすべてと言ってもいい悟が生きていたと聞いて、待つことなんてできるはずがない。


 あぁ...........久しぶりに頭が冴えてきた。活力が湧いてくる。死んでいるようなものだった脳もやっと動き出して視界が明瞭になっていく。


 そうして、悟を待つなんてことをしなかった私は、あらゆる可能性を考え一番可能性の高い美嘉というあの異常者の家に行っているのではないかとそう結論付けた私は、あの女の家は分からないがどのあたりかくらいまでは知っているのでその付近を毎日ずっと、探し続けた。



 ...........私は見つけた。


 私の生きる希望。



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