第30話
目が覚めると朝の五時だった。疲れていても毎回この時間に起きる。生活習慣というものはすごいななんて思いながら、周囲を見渡すとどうやら彼女は自室ではなくここで寝たらしい。あどけない顔を晒して、薄い下着をつけて寝ていた。
下半身に血が集まっていくのを感じたが、寝ている女の子に手を出すほどの性欲はたまっていないため、起きて洗面台を使わせてもらい、昨日買っておいた歯ブラシで歯を磨いてすっきりした状態でキッチンへと立つ。
昨日買っておいた食パンやベーコン、あと元々あった卵などを使い簡単なものを作っていく。合間に昨日返せなかったメッセージを返していく。どうやら昨日返せなかっただけで、美鈴からはごめんなさいの嵐だった。悪いのはメッセージを返していない僕なんだけれど。
メッセージを送ると、すぐに既読がついて驚く。聞いてみるとどうやら昨日からずっと起きていたみたいだ。心配させてごめん。
数分やり取りをしてから、時間はあるのでのんびり朝食を作っていると六時半くらいになった。ここから学校は近いとはいえ、準備もあるだろうからそろそろ美嘉を起こそうかなと思ったタイミングで、眠そうにあくびをしながら彼女は起き上がった。
「おはよう、美嘉」
「........んぅ。おはようございます、悟さん」
まだ意識は覚醒していないようでふらふらとした足取りで、洗面所の方へと進んでいく。それを見送りつつ、彼女が来る前にテーブルの上に朝食を並べ終え、桜や美鈴、可憐からのメッセージを返しておく。
「すっごくいい匂いするなって思ったら、朝ごはん用意してくれてたんですね」
「暇だったし、泊めてくれたお礼」
「いや........感謝するのは私の方なんですけれど。やっぱり変な人ですね、悟さんって」
そう言って席に着いたので、二人で昨日のように朝ごはんを食べていく。
「久しぶりに、朝ごはんなんて食べたかも」
「ダメだよ、食べなきゃ。授業中にお腹なるの嫌でしょ?」
「ぷふっ、そうですね。これからは出来るだけ食べるようにします」
そんな他愛のない話をしながら朝食を食べ終え、各々支度をしてから美嘉の家を出た。
「お邪魔しました」
「いえ、全然お邪魔じゃなかったし、悟さんがいてくれて助かったというか」
「それなら、良かった。あ、それと、二千円返すのまた明日でもいいかな?今から帰って持ってくるのに時間が足りなくて」
「あ、そういえばそうでしたね。全然それでもいいで........」
言いかけて彼女はそこで何か考えるような顔をして、次には驚きの一言を放った。
「その二千円は返さなくていいです」
「え?ダメだよ。返さないと気が済まない」
「返さなくてもいいです。その代わりに何ですけれど、今日も悟さんは私の家に来てもらうことってできますか?」
「え?できる、けれど」
僕が家にいて邪魔なだけだろうし。まぁでも一応叔母さんには話をしておかないと。
「先輩はママ活って知ってますか?」
「え?聞いたことはあるよ」
「悟さんには、JK活をしてもらいます。私が悟さんにお金をあげるので私に付き合ってください」
「え?」
僕は思わずその場に棒立ちになった。
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