第17話
桜が眠っている間、鏡花から山のように送られてきた連絡を返しているとあっという間に時間が過ぎていた。
というか、鏡花は授業中のはずなんだけれど、いいのかな?
そんなことを考えていると
「ん...........んぅ?」
「おはよう、桜」
「...........おにい、ちゃん?」
「うん、僕だよ。おはよう」
そう呼びかけると寝ぼけていた頭が徐々に覚醒し始めたのか、またも目にいっぱいの涙を溜め始める桜。
「ゆ、夢じゃなかった。お、お兄ちゃんはやっぱり生きてた!!良かった、よかったよぉ」
「ごめんね、桜。遅くなっちゃった」
「うんうん、良いの。私はお兄ちゃんが生きてくれてただけですっごく嬉しいの」
握っていた手を放す代わり、か細い手で僕の事を抱きしめる桜の頭を落ち着くまで優しく撫でる。
数十分してからようやく落ち着きを取り戻し始め、泣いていたのが気恥ずかしくなったのか彼女はそっと袖で涙を拭き、こちらに向き直った。
「お兄ちゃん、おかえり」
彼女の笑顔が物凄く眩しく見える。その分自分の犯した罪に対しる意識がムクムクと芽生えてしまい思わず顔を逸らしてしまいそうになるが、ここで逸らしたら後悔することになるし、罪から逃げている。
「ただいま、桜」
しっかりと目を合わせ彼女になるべく自然な笑顔で返した。益々桜は笑顔になり、ニコニコとした顔で僕に微笑みかける。
だが、どうしてだろう。段々と彼女の目は黒ずんでいく。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「なに?」
「早速、聞きたい事があるんだけれどね?」
「う、うん」
先ほどと変わらぬとても眩しい、彼女に似合った可愛らしい笑みを浮かべているが目は先程よりドス黒くなっている気がしてならない。
「お兄ちゃんは、一体どこで何してたのかな?お兄ちゃんが居なくて寂しくて、怖くて、辛くて死にそうだったのにお兄ちゃんは何処で何をしてたんだろうなぁー、私、すっごく気になる」
「それは...........」
「また、お兄ちゃんが急にいなくなっちゃったら私は、今度こそおかしくなっちゃうから理由を教えてくれるとすっごく嬉しいなぁ」
柔らかい、誰でも溶かして彼女の虜になってしまう程の笑みを浮かべてはいるがやはりどうにも様子がおかしい。
...........分かってはいる。彼女をこうさせてしまった原因は自分にあるというくらい。だが、実際に目にして接するまで事の重大さを甘く見ていたのかもしれない。
桜の中での僕の大きさを軽く見すぎていた。
「お兄ちゃん、教えて?ねぇ、おにいちゃん」
「分かった。今まで何があったのか教えるよ」
事のすべてを彼女に話すことを決めた。
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