第15話
「そう言えば..............桜、美鈴、美嘉って今頃何やっているか知ってる?」
「…他の女の名前出さないで。今は、私と悟だけでしょ?」
「ごめんね。でも、心配なんだ。だからどうか教えてくれないかな?」
「..............仕方ない。でも聞き終わったらお詫びにキスして。勿論、その先もしてくれて良い」
時は戻り、鏡花の屋敷。
あの後、何とか二人を落ち着かせることに成功した悟は鏡花にここの家に住むことを約束し、今日は祥子と二人でいさせてくれと懇願したところ「明日は学校休んでずっと二人で一緒にいる。片時も離れないから。あと絶対にエッチはしちゃだめ。したら私、許さないから」とジト目で言われた。
「って言っても私も別にあの女たちに関わりたくなかったから知らないことの方が多いけれど」
「大丈夫。知っている事だけでも話してくれればいいよ」
「分かった」
そう言った祥子の口から出された言葉は、悟の予想を裏切るものだった。
悟は、自分が居なくても彼女たちは生きていけるだろうと高を括っていたが実際に来た話は彼女達はかなり心が擦れて病んでいるらしい。
「生徒会長は、皆から頼れる生徒会長ではなくなっちゃったみたい。毎日死んだような顔をして学校に登校しているって。美嘉は、そもそも学校にも来ていない。噂では、死んでるんじゃないかって。あの声優女も学校にはほとんど来ないで仕事ばっかして、噂では倒れて入院しているとか。可憐は..............あの女はどうだろう?多分だけれど悟が生きてるんじゃないかって疑ってる。ずっとわたしに付きまとってくるし。でも、放課後の空き教室で泣いてたって話は聞いたことある」
悟は天を仰いで、祥子の口から出された言葉を何とか飲み込むことにした。まさか、そこまで酷いことになっているなんて思ってもいなかったからだ。
自分の甘すぎる考えを悔いた。一見大丈夫に見えていた彼女たちは見えていなかっただけでかなり酷い精神状態だったらしい。自分がいないと彼女達がそんな風になるなんて。
..............どうしようか。彼女たちに今すぐ会いに行かなければいけないという使命感が沸々と湧いて来るが、鏡花の事を考えるとそれもできそうにない。
だけれど、何とか頼み込まなければいけない。絶対に。もうこれ以上僕の前で死ぬ人は見たくないからと悟は決心する。
が、今はもう夜も大分深まってきている。鏡花に言うのは明日にするしかないだろうとそう思い祥子の頭を撫で、お詫びのキスをした。
「祥子。..............もしなんだけれど、祥子は僕が生きていることを知らなかったらどうしてた?」
「..............考えるだけで辛いけれど、きっと私もあいつらみたいになってたかも。いやそれ以上に酷いかも?死にたくなりそう」
「..............ごめんね」
祥子は悟と目を合わせ、軽いキスをした後
「もうこんなことしないで。私の前から急にいなくならないで。私の事を見捨てないで」
「..............ごめん」
「悟が反省しているならいいよ、赦してあげる。でもこれからはずっと放さないから。悟をちゃんと監視してなかった私も悪いし」
祥子の目は本気なようでこれからはずっと付きまとわれるかもしれないとそう思えてしまう程、ギラギラとしておりそして何処か黒ずんでいた。
祥子でこれなのだから他の四人はいったいどうなってしまっているのだろうと頭を抱えそうになった悟だが、自分で蒔いた種なのでどうにかするしかないと腹を括ることにした。
「そろそろ寝よっか。もう遅いし」
「..............まだダメ。私が満足するまでキスしてからハグして寝る」
そこから悟は一時間ほど祥子にずっとキスされ、ベトベトになった体を清めてから寝ることになったりその間にまたキスをされていたため寝るのは三時を過ぎてからになった。
*******
翌朝、朝食を食べおえ祥子は随分とごねてから悟から離れ鏡花の屋敷から出て行った。
「さて、悟との甘い時間をあの女狐に奪われちゃったから今から時間を取り戻さなきゃね」
「お手柔らかにお願いします」
そこからは鏡花は片時も放さないと言わんばかりに悟に引っ付き、時折暑い視線を送りながらキスをしたりしていた。
悟は鏡花の事を半分、彼女たちの事を半分考えていた。
「..............悟、今私以外の事考えてたでしょ?」
「…あはは」
鏡花はそんな悟の事をジト目で見つめ、そう言ってきた。
「女の子はそう言うのすぐに分かるからね?..............どうせ、あいつのこと考えてたんでしょ?それに昨日の感じだとあいつ以外にもいるよね?」
「..............そうだね。祥子以外に四人いるかな」
「…悟は真正の女たらしだね。本当にいつか刺されるからね。私がそんなことさせないけれど」
「あはは、そうならない為に頑張るよ」
酷い言われようだが、あながち間違ってはいない為否定ができない悟は嗤って返すしかなかった。
「あのさ、鏡花」
「..............ダメ。絶対」
「まだ何も言ってないんだけれど」
思わず苦笑してしまう悟だが、譲ることはできない為続きを話す。
「どうせ、あの女たちの所へ行くんでしょ?」
「.......うん。心配なんだ。どうしようもなく」
「悟…まだ過去を引き摺ってるの?悟はもう十分頑張ったよ。私も救ってくれたし他の女も救った。後は各々が頑張らなきゃじゃない?悟に寄生している私が言うのもなんだけれど」
「それでも。ごめんね。僕は多分この先もずっと過去を引き摺って生きていかなきゃならないんだ」
悟の真剣な顔に鏡花は大きくため息を吐く。
「…仕方ない、のかな。正直悟を外に出すのは死ぬほど嫌だけれど、良いよ。行っても。これから先もこういうことあるかもしれないし」
「…ありがとう」
「でも、これだけは約束して。毎日どれだけ遅くなっても良いから帰ってくること。連絡は返すこと。それから私を毎日抱きしめること。キスもすること、後は.......」
様々な条件を付けたされはしたが、悟は外出の許可を得ることに成功した。
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