第7話 私の悟
さて、厄介なことになった。
「今すぐここを出て行ってください。さもなくばあなたをこの世から抹消しますよ。私にはそれくらいの覚悟と力があります。悟の為ですから」
「いいよ、やってみればいい。そしたら私はそれをライブ配信してあなたも社会から消してあげる。あなたの家の力も地に落ちるだろうね」
確かに祥子がVtuberと言う生命を捨てて生ライブ配信をすれば、命は助かりはするだろうけれど今まで積み上げてきたものが無くなってしまう。
あの後、祥子はずっと僕の膝の上を占領し続け会えなかった分を取り戻すかのように甘えてきたので僕も黙っていなくなったために拒否することもできず、されるがままになっていると案の定彼女が帰ってきて大騒ぎになった。
そして、今があるというわけだ。
「二人とも一旦落ち着こう。お互いの為にならないから」
「「.............」」
僕の言葉に二人は致し方なしと言わんばかりに、休戦し祥子は僕の左側を占領し、それを見た鏡花は対抗心をむき出しにして右腕を痛いほど抱きしめた。
僕を挟んでの休戦と言ったものの、二人は僕を間に通して睨み合っている。
「鏡花、この子は祥子って言って僕が通っていた学校のそうだな..............ともだ…」
「将来を誓い合ったもの同士。毎日イチャイチャしてた。あんなことやこんなことだってした。もう夫婦同然の仲!!」
と勝ち誇ったような顔を鏡花へと向ける。
というかあんなことやこんなことってなんだ?祥子とはキスはしたもののそういうことは一回もしていないと思うけれど。
「わ、私だって悟とは毎日あんなことやこんなことしてるし。あなたよりずっと深い仲だから!!」
「夫婦同然の仲に割り込むすきなんてない。はい論破」
「実際の夫婦じゃないから割り込む隙はあります、論破です!!」
鏡花も鏡花で張り合わなくていいから。
二人の頭を撫でてどうにか落ち着きを取り戻させ、元の話し合いに戻す。お互いに自己紹介を済ませて今どういう状況になっているのかを祥子に話すことにした。
「僕は今、ここから動けそうにないんだ」
「…どうして?この女が悟の事を縛り付けてるから?」
「簡単に言ってしまえばそうって言えるかな」
「わ、私は悟の事縛り付けてなんかいません。悟の願いを叶えているだけです!!悟があんなこと言うから」
「…あんなこと?」
「鏡花、それは言っちゃダメ。絶対に」
僕が死にたいって思ってることを祥子に伝えればどうなるか分からない。他の四人にもそのことが伝われば彼女たちが前を向いて歩けなくなってしまう可能性がある。
僕が鏡花に対して強めにそう言うと彼女はおとなしく口を結んだ。
「まぁ、兎に角鏡花の気が済むまでここにいなくちゃいけない」
「理由は分からないけれど...........私は全然納得できない。悟を独り占めにするのはずるい。私だって悟と一緒に住みたい。この女よりも私は悟の事を満足させられる自信がある。私はこの女と違って自分でお金稼いでる。なんだって好きなもの買ってあげられる。衣食住はすべて保障するから私の家に来て」
真剣な瞳で祥子が訴えかけてくる。でも、ここから離れてしまえば鏡花が何をするか分かったものではない。彼女は僕がいなくなれば死のうとするだろう。
「悟もしあなたがいなくなれば...........」
「分かってるから。.........ごめん、祥子。その提案には乗れない」
「...........ヤダ。やだやだやだやだ。この女だけズルい!!私も悟と一緒にいる!!絶対ヤダ」
「ま、まって祥子」
駄々っ子のように僕に抱き着き、そして鏡花のいる前でキスをしてきた。口内を蹂躙され、互いの唾液を交換し合う。
「わ、私の悟に!!私の悟に何してるの!!」
と鏡花は祥子を突き飛ばし、庇うようにして僕の前に出た。
「あなたの悟じゃない。私の悟。勘違いしないで。悟を縛り付けてるだけの厄介女」
「うるさい!!悟の事なーんにも知らない癖に。悟の家庭事情とか、悟がどんな思いをして生きてきたか何も知らない癖に!!」
睨み合いお互い一歩も譲らない姿勢を取る。もう少しすれば殴り合いに発展してしかねない状況になってしまった。
「私の悟!!」
「私の悟です!!」
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