年下の、キレイな男の子

西しまこ

1.

 彼に会ったのは偶然だった。一瞬、誰だか分からなくて、でもやっぱり知っている人のような気がして、陽菜ひなはすれ違ってから振り向いた。

「陽菜ちゃん?」先に名前を呼ばれた。

「……みのるくん?」

「うん、久しぶり!」

「本当に久しぶり。元気だった? ……大きくなったわね」

「あ、何言ってんの?」

「だって、前に会ったとき、實くん、高校生じゃなかった?」

「うん、そう。高校一年生だったと思う」

「ふふふ。男っぽくなった! 最初、分からなかったよ」

「僕はすぐに分かったよ、陽菜ちゃんだって。全然変わらないね」

「そんなことないよ。わたし、来年三十になるよ」

「そうなの?」

「そうよ。はると八歳違うもの」

 晴は陽菜の弟だ。そして、實は晴の同い年の友だちで、よく家に遊びに来ていたのだ。陽菜が実家を出るまで、家でたびたび顔を合わせていた。

「そうだっけ?」

「そうよ」

 駅前のスペースで少し立ち話をしたあと、「ごはん食べに行こうよ」とごはんを食べに行くことになった。


「おいしかったね」

「うん、お腹いっぱい」

 食事が終わってお店を出てもお互い「じゃあね」と手を振ることが出来なくて、二人とも、なんとなく話したりないような気持ちでいた。そして陽菜は、五年ぶりに会った弟の友だちを見て、なんてキレイな顔なんだろう? と思っていた。五年前まだ十六歳だったころの實は、まるで女の子みたいだったな、などと思い出して、思わずくすりと笑った。

「あ、何笑ってんの?」

「實くん、女の子みたいにかわいかったって思って」

「あ、ひでー」

「いいじゃない。本当にかわいいなって思っていたのよ」

「……僕は、陽菜ちゃんのことをきれいだなって思っていたよ」

「ありがとう。……ね、コーヒー、飲まない?」

「うん」

「うちにおいでよ。コーヒー、淹れてあげる」

「……うん」

 陽菜は下心があって誘ったのではなかった。しかし、コーヒーを飲みながら、なんとなくもじもじしているような實を見ていたら、ついキスしたくなってしまい、キスをしてしまった。

 唇を何度か重ねて、それから舌で彼の舌を探す。實は、最初はぎこちなく、それから次第に大胆に、舌を絡めてきた。手は乳房を探し、それから服を脱がしていく。

「陽菜ちゃん……」

 實が小さく呟く。陽菜は、實をベッドに連れて行く。

「いいの?」

 そう尋ねる實に、陽菜は彼の服を脱がせた。それから、彼を口で含む。

「……陽菜ちゃん……!」

 實は陽菜の頭を抱え、「ねえ、すごく気持ちいい。でも、僕、陽菜ちゃんに入れたい」と言い、陽菜を押し倒して覆いかぶさった。


 キレイな顔の男の子は好きだ、と陽菜は思った。

 陽菜は隣で寝ている實の顔をじっと見つめた。

 すべすべの肌。整った顔。引き締まった肉体。――うんと、触りたくなる。

 陽菜は、實の顔をつつつと指で触った。それから、唇をなぞって、唇をこじあけて歯を触った。「ん」と實が声を出す。

「陽菜ちゃん……?」

 目を開けても、キレイ。

 陽菜は實にキスをした。實はかわいい女の子から、キレイな顔の男の子になった、と思った。色々なところにキスをする――舐める。

「陽菜ちゃん、夢じゃなかったんだ」

「ん」

「僕、夢かと思ってた」

「夢じゃないよ」

「……陽菜ちゃん……ま、待って」

「待たない」

 キレイな顔が快楽で歪む。陽菜はもっと気持ちよくなればいいと思う。「陽菜ちゃん、どうしてこんなこと、知ってるの? ……!」

 陽菜が唇を拭うと、實は「今度は僕にさせて?」と陽菜の乳房に唇を寄せた。

「今日は土曜日だから――時間はあるよね?」

「うん、たっぷり」

 ふふと笑い合って、ふたりは唇を寄せた。

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