冷たい世界、例えるなら0度以下の・・・・

bbキャンセル君

<番外編・短編>バスの行き先

「今日はね。このバスの目的地に、初めて訪れた記念日なんだ」

気がつけば知らないバスの座席に座っていた、

意識がしっかりした俺はへーと聞き逃す。

前の運賃表を見れば、言語では無い文字で何か書かれている。

あれは何語なんだ?

「なあ、このバスは何処へ行くんだ?」

ざわざわと胸騒ぎ。

「・・・・・。この世とは思えない世界だよ。とても綺麗なんだ」

何故か哀れみの目で見られる。

その態度気にくわねぇな。

へぇーと軽く、視線を外に向ける。

(何も無いんだな、ずっとトンネルに入ってるみたいに真っ暗だ。明かりが一つ無い)

ああ、俺は何処へ行くんだろ。

しばらく沈黙が続く。

「バスの運転手本当にいんのか?なんか気配感じないんだが」

「何言ってるの?普通にいるでしょ」

何か知らないけどキレられる。

「あーそうだよな、ごめんなクソガキ。俺馬鹿だからさ許して」

「許してあげるから大人しく死ね」

睨み付けると少年の瞳は徐々に光が消えていく。

はぁとため息を吐き、視線を外に戻す。

ずっと暗かった景色が田舎にある一面田んぼへと景色が変わる。

流れていく景色、一つだけある道路標識、あれは何処にでもある止まれの標識だと思っていた。

光に照らされるまでは・・・・。

バスのライトが標識を照らしたタイミングで、文字が浮かび上がる。

これは意味不明な言語じゃ無い、れっきとした日本語だ。

"この先冥界"

バッと少年の方を見ると、影一つも無かった。


俺は冷や汗を垂らしながら、運転手の元へ急いで駆け寄り

「おい今すぐ止めろ!!」

応答は無い、椅子から引きずり下ろそうとしても、一ミリも動かない。

「クッソ!」

俺は後ろに戻り、一つの消化器を見つける。

「これしかねぇよな!!」

ガンッとガラスを割ろうと試みるも、ヒビさえも入らないことに絶望を感じる。

このままじゃあ俺は・・・・。

ふと蘇る、家族の姿、日常、優しさに涙がこぼれる。

諦めるのか?

此処にいない筈の家族に励まされてる気分になる。

もう一度、そうだまだ死んだ訳じゃあ無い。

まだ冥界に辿り着くまで時間はある筈、諦めたくない。

また一緒に家族と食卓を囲みたい。

俺は、

何度も何度も、同じ事して他人から見れば馬鹿みたいなんだろうけど

俺は真剣なんだよ!!

ピシッ

「あっ!もう少し」

ガンッ

パリン!!!!!!

ガラスが割れる清々しい音、

俺は開いたガラスをくぐって外に出た。

勿論止まっていないので、転がる様に地面へと叩きつけられる。

「くっ、はぁ・・・やったか?」

ざっざっざっ

「今日はね。**に初めて訪れた記念日なんだ。君も同じになりたかったなー」

見覚えのある声の方を恐る恐る見れば、クソガキ。

残念そうに笑っている彼はおそらく建前。びしびしと感じるんだよ!隠す気も無いお前の憎しみが!!!!!!

ガキはワラって、ドロドロとした化け物になって襲いかかってくる。

「チッ」

せっかく脱出したのに、これじゃあ・・・・

田んぼをの先の道、を走り抜ける。

「逃げないでよどうせお前は出られない」

「うるせーわかんねーだろうが!ガキは寝る時間だろ?とっとと永眠しろよ!」

「はあ?うざいなーまじで。記念日命日ぐらい良い思いさせてよ」

走り抜けた先は駅に、妙に惹かれる公衆電話。

「あーそうだよな、やってみなきゃだよな」

扉が無い公衆電話に幼い妹にお小遣いだと言われて貰った10円玉を入れる。

チャリン

受話器を耳にあてれば

ぷるるる!

ガチャ

「こんな夜遅くまで何してるの友矢!!はやく帰ってきなさい!ご飯出来てるわよ!」

怒りの母の声に安堵する

俺は

「ああ、今から帰るよ母さん、いつもごめんね。」

微笑んで受話器を戻せば、意識が消える。



目が覚めれば、何気ない日常を象る自室。

ああ帰ってきたんだ。


ポケットを探っても、妹から貰った10円が無い。


はぁーとため息を吐いて、リビングへ向かう

皆の声、

「母さん、今日の夕飯はってはあ?!」

「友矢、どうしたの?ガクガク震えちゃって・・・・風邪?」

皆心配そうに俺を見るのは良いんだ。

問題なのは一人部外者が交じってる事に気がついていない事だ。

「なんでお前が此処に居るんだよ!?」

恐怖で震える手、皆が兄弟喧嘩?という視線を向けてきている事へのイライラ。

部外者というのは俺をあの世に送ろうとしてきたクソ野郎ガキ

にやぁと狂気的な笑みを浮かべて

「記念日は違くても作れるものだよ、お兄ちゃん」

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