このバカップルには付き合いきれない
芹沢紅葉
プロローグ
柔らかな日差しが
小さなダイニングテーブルに
きゃっきゃと笑う子供たちの声が私の住んでいるアパートの前を通り過ぎていく。この時間と、高い声を聴くに小学生ね。ふと、思い出す。あの日、私の具合が悪くならなければあんなことは起こらなかったのに。
何もかも尽きることが不安で、大したことはしてあげられなかったけれど。ようやく迎えに行ける。私、ずっとずっと、待っていたの。
背後には
手元には、ある
そうでないと、きっとあなたを守ってあげられないから。
気が付けば一人の部屋。ここは少し寂しい場所だ。
「待っていてね、もうすぐだから」
早く会いたい。私の、大事な――。
それなりに燃え上がる炎の使い手も、勢いよく流れる水の使い手も、誰も彼もが
もっと
一瞬で能力を発動させれる人物の方が珍しいのだろうけれど、俺からすればそっちの方が当たり前だ。
先生が次の測定者を呼ぶ。高校のグラウンドで行われている一種の行事に盛り上がってる周囲とは対照的に、俺は退屈を持て余していた。けれど、飽きるものは飽きるんだから仕方ない。
本当は能力を使うのって、そんなに難しいのかな。だとしたら、俺の知っている能力者って割ととんでもない化け物だったりして。
そんなことを考えながらあくびをする。
「
先生に見られて注意された。仕方ないじゃん。昨日の夜は俺を雇ってくれている人の
でも元々の成績はよくないんだから真面目にしないといけない。けれど、ああ、めんどくさい。めんどくさすぎて眠い。能力なんて、とっくに見慣れてるし扱い方も知っている。だって俺は、この国で一番すごい能力者に仕えているんだから。
「全力を出し切れ。お前たちの将来がかかっているんだからな!」
この最終能力測定によって、進路が大きく変わるといってもいい一大イベント。測定する先生の方にもかなりの熱が入っている。この能力測定を見てから一年生も意気込んで後ほど挑むわけだけど。
この社会には昔から異能力と呼ばれるものが存在している。今でこそ《エレメント》と呼ばれるようになったそれには四つの属性がある。
そんな能力が現代まで残っていて、しかもその能力が人の
この学校は、基本的にエレメントを使えるものが専門の学部に入学する。一般生徒枠も各学年に一つはあるけれど、メインとなるのはやはりエレメントを使える者だ。その時点で、カースト制度が
何人かの能力測定が終わったが、
「次! 二年C組、
次に出てきた二年生の生徒は、どうやら金のエレメントを使えるらしい。
少し離れた位置にいるから詠唱は上手く聞き取れない。けれど、どうやら道具を使って能力を発動させているらしい。手元の
「うわぁ……凄いね、
隣で驚いた様子の女子生徒、
まぁ、なんとなくその理由を
「あれがこの学校本来の標準レベルって感じだと思うよ」
はぁ、と感心したように息を
「あの人かっこいい!」
「誰だろう?」
あの人が誰だか知らないで騒いでいるのだから
「
江奈の声が少しだけ期待に
「危ない!」
先生の声が聞こえたかと思うと、浮いていた車が空中で不安定にゆらゆらと動き出した。落ちる。その
「燃えろ」
「今の何だよ!?」
またざわつき始める一年生たちの
「……怜央さん」
俺の
そんな怜央さんが、あんなことになるなんて夢にも思わなかった。
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