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PM 5:20 探偵事務所 如月
不良学生のグループの中にいた1人の男子学生を事務所に招き、彼らについて話を聞く。
私のことを『魔女』と呼び、ここまで恐れずに肝を据えてるのは、かなり珍しい。
やはり、今の子達は上手くわきまえられるみたいだ。っと思いたいが、そうもならないらしい。
ついでで、あの教室の陰湿な空気について、もう一度聞こうとしたが、依頼した学生達は彼を警戒している。
「では、話を聞きたいところだが、そろそろ和解してもいいんじゃないか?」
どうも、今の子達は一度敵対感情を抱くと、解消する気なんてないらしい。殺し合いに発展させる勇気がないようで助かるが、この空気は重すぎてこちらも気が引けてしまう。
溜息を吐きながら、ただ端と時間が過ぎていく。行を煮やした私は、話を始める。
「納得できない気持ちをわかるが、彼は自分の意思で私に着いてきたんだ。それだけでも許してやってくれるかな?」
「…………納得できません。彼は、あの連中と一緒に行ったんですよ! それを易々と許せといいんですか!?」
「そうです!! こいつは、俺の妹を酷い目に合わせた連中と一緒にいたんです!! そんなの土下座しようとも許す気は無い!!」
「はいはい。君らの言い分はわかるけど、こいつも、もうあの連中には嫌気がさしたんでしょう? それだけでもいいんじゃないの?」
「いいえ! たとえ嘘でなくても、俺の心は断固として許しません!!」
彼は、元いじめグループの少年に殴りかかる。他の生徒達は、彼を必死に止めるが、頭に血が昇っていて静止が効かなくなってる。
元いじめグループの少年は、それを受け止める。私と明日香は止めに入るが、ある人物の一喝で場が静まり返る。
「いい加減にしなさい!! まともな話し合いをせず、暴力を振るってはいけません!!」
生徒達は、ラスティアの一喝に鎮まりかえる。だが、そのうちの生徒が、怒りの余りラスティアに取っ付く。
「だ、だけど、こいつはあの連中にいておいて、それを止めなかったんですよ!! それを庇うなんて、冗談じゃない!!」
彼は、ラスティアに反論をするが、ラスティアの一言で完全に鎮まる。
「だからって、あなたが暴力を振るっていいなんて、言い訳がないでしょう!!」
私は、怒るラスティアを止める。
「ま、まぁ。彼ももう自分の行いを改めるんだから、その辺で」
「姉さん! 姉さんも自分で事を進めすぎです! こうなることは大方予想がついたでしょうに」
ラスティアの一言に、私は何も言えなくなる。ラスティアを怒らせると、何も言えなくなる上、氷のような眼差しでこちらを見るので、余計に怖く感じる。
前に明日香がラスティアのケーキをうっかり食べてしまい、こびっどく怒られた時は、半分悪寒を感じながら説教されたのだ。
「それはともかく、あなたが手を出したら、妹さんが悲しむでしょ? そのためにも、あなたが彼を許す事で妹さんのような被害が出なくなるはずです」
「……わ、わかりました。お騒がせして、ごめんなさい」
ラスティアに説得され、彼はかなり落ち着いたそうだ。安堵した私は、彼に目を向ける。
「悪いね。では、改めて話してくれ」
彼は頷くと、淡々と話し始める。
「話し始める前に、まずは謝らせてほしい。何もしてないといえど、奴らに加担していたの事実だからな。
すまなかった、ではすまないとは思う。だから、俺はこの罪を背負おうと思う。それで許してもらえないだろうか?」
「確かに、それだけで許そうなんて、被害を受けた方々には到底考えられないでしょう。でも、あなたが深く詫びているのであれば、ここは収めてあげます。
それよりもまずは、このいじめ問題を終わらせることが優先ですから」
「感謝する。では、始めよう。俺はあのグループにいた。いや、俺の彼女があのグループの中核の人物だった。
俺は、あの連中の目を盗んで、被害にあった生徒に誤りに行った。もちろん、お前らみたいなのにも遭遇したし、殴られもした。
そんな日々を過ごしてるうちに、もっと厄介なことが起きたんだ」
「もっと厄介なこと? それって、一体?」
「ある日の夜、俺らは遅くまで街を歩いた。それも、すすきのをな。そしたら、ある大柄の外国人と出くわした。
そいつは、宿を探していたらしく、俺らはそいつをその宿に案内したよ。金目当てだけどな。
だが、そいつは生憎金を持っていなかったんだ。俺らは、もといあいつらはそいつに殴りかかった。でも、当然返り討ちにあった。
でも、奴は俺らを大層気に入り、俺らにこう言ったんだ。『力は欲しいか』ってな」
「そいつが、君らに魔術を吹き込んだ魔術師だな?」
「あぁ、そうだ。俺はあの時薄々感じたよ。これはただ事にならない、いい加減手を引こうと。でも、奴らはそうはしなかった。
奴に教わった魔術をすぐに実践し、あのクラスでのいじめをより酷くさせた。終いには、教師たちにバレないほどにな。
そんな時だ。あんたがこの件に関わったことで、確信したよ。あんたなら、魔術師であるあんたなら、これを終わらせれんじゃ無いかって。
あの日以来、あんたのことを調べていた。『魔女が営む探偵事務所』のスレもな。そしたらなんだ、あいつらへの情が消えたよ」
「――――――――それで、私に彼らを止めて欲しいと?」
「あぁ。これ以上、被害者たちの苦しむ顔はもううんざりだ。頼む、あいつらを止めてくれ!
この通りだ! もちろん、この件が終わったらけじめをつける!!」
「姉さん……」っと私の顔を見るラスティア。彼の言葉に、依頼した生徒達は、言葉にできずにいる。
「いいだろう。でも、これだけは忘れないでほしい。君のやってきたことは歴とした犯罪だ。
彼らの側にいながら、それを止めもしなかった。それだけでも、君は歴とした犯罪者だ。わかるかい?
本来私がやることなら、君を警察に差し出し、事の真相を話させてるだろう。でも、魔術は別だ。
私は、
私の言葉に、彼は手を震えながら私を見る。そして、私は彼に対してこういった。
「でも、こうしてるだけでも、立派だよ。ここに来た事は、仲間を売った事を意味してるわけだ。
君は仲間から、酷い仕打ちをされるだろう。それでもいいなら、私はこれを改めて引き受けよう。
それでもいいかい? たとえ、あの連中の中に、死人が出ることになっても」
「それでも構わない。もう、人が一生の傷を背負わなくなるなら、俺は『魔女』に魂を売る気だ!」
彼の眼差しを見て、私は一つの決心をする。もう人が苦しまなくなるなら、悪魔に魂を売ることも意図は無い彼の目に。
「わかった。では、改めて始めるとしよう。先に聞くが、あのグループで一番魔術を使いこなしてるのは。誰だい?」
「俺の彼女だ。あの魔術師からも好評だったからな」
「では、君のクラスのあの陰湿な雰囲気も、彼女さんがやったものと見ていいかい?」
「あぁ、そうだ。これから、向かうのか?」
「そのつもりだ。そうでなきゃ、被害者が出るかもわからないしね」
私の言葉に、彼は納得したように頷く。すると、彼は私にある紙を渡す。
広げてみると、何やらあの学校の裏口に通じる地図が、記されていた。
「これを使ってくれ。それなら楽に入れる」
「ありがとう。丁重に使わせてもらうよ」
「どうするの? 姉さん」
「学校に行く前に、もう時間も遅い。まずは彼らを送ってから、学校に向かうとしよう」
「7人なら、余裕でしょう? あの車、7人乗り出し」
呆れながら、車を用意するラスティア。その声を聞いた生徒達は、帰る支度をする。
こうして、私は一服をしながらみんな用意を待つことにしたにだった。
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