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PM 4:10 札幌市内の高校


調査依頼 1日目

  

 放課後になり、生徒が次々と下校していく。私は、読み漁った魔術書を鞄にしまい、依頼者の教室に向かう。

 廊下を歩いていると、私を見て振り返る生徒達が何人かいた。


「えぇ? 誰あの人」「すごい綺麗……」などの声がすれ違い側に聞こえる。まだ部活動で残ってる生徒もいたみたいだ。


 それもそうだ。私は、余所者も同然であるのだから。

 ドアを開けて、教室に入る。すると、何か違和感を感じ、少しだけ後ろに下がる。

 ここに立っているだけで、理性が持っていかれそうになる感覚だ。

 私は、魔力阻害の術式を自分に付与する。こうすることで、結界の影響なく結界内に入れるからだ。

 しかし、それにしても強い結界だ。ここまで練度が高いとは、予想外であった。


「早いところ、解呪をしないと厄介だな」


 私は、結界の中を歩くが、高い魔力濃度によって進む足が重くなる。

 いや違う、これは何重に張られてるだけだ。どうりで、『魔素』が高く感じるのはこの為だったらしい。

 私は、よろけながら結界の核となる所に着く。机に触ってみると、机の下に貼り紙が貼られてる感触がする。

 机の下の紙を剥がして左手に小杖をもち、貼り紙の当てる。すると、結界を形成している魔方陣が現れる。

 私は魔方陣を形成している術式にハッキングをする。ハッキングをすると、結界を構成していた術式は異常を感じ、そして崩壊していく。

 結界が消滅していくと、教室を覆い尽くしていた『魔素』は晴れて行く。


「一枚の紙で、こんなに結界を張れるとはな」


 私は驚きつつも、教室を後にしていく。私は結界を形成していた貼り紙をしまい、それを鞄にしまう。


「確か、教員からは、ここを好きに使っていいと言ってたな。明日もここを借りよう」


 そろそろ、学校が閉まる時間になる。私は荷物を纏めて今日は切り上げることにした。   


――――――――――――――――――――――


数時間後 如月邸 アルトナの工房


 食事をすませ、事務所の地下の工房に入る。鞄から先ほど回収した貼り紙をとり、書庫から信憑性の高い魔術書を持っていき本を読み漁る。

 何冊か読み漁るが、それらしい物を記載したページを見るが、どうも該当しない。

 何せ素人が作ったものだから、変に細工して作ったのだろう。

 若干途方にくれてると、ふと埃が溜まってる魔術書を見つける。


「もしかして?」っと思いつつ、その魔術書を読んでみる。しばらくページをめくると、私の探していたものが見つかる。

 どうやら、この魔術書に記載されてるこのページに、信憑性の高いものがあった。


「なるほど……。この術式を誰かから教わった感じか……。」


 あの教室の結界の正体。それは、空間内の事象を外部に認識させないというものだ。

 この術式は、結界内で行われいる行為を外部に認識させず、何事もなかったようにする魔術だ。

 まぁ、要は結界内を擬似的なパラレルワールドにする感じか。外と内では、当然認識の差が出るだろう。

 厄介なのは、非魔術師には、それがわからないということだ。だが、依頼してきた子達は違和感を感じたので、それなりの魔力量があったのだろうかは今は気にしなくていいだろう。

 ともかく、まずはあのクラスで張られた結界は解呪することができた。これでどうなっているかは、明日また行ってみてみないとわからない。

 私は、工房を後にし明日の支度を始めた。


――――――――――――――――――――――――


調査依頼 2日目 PM 1:30 札幌市内の高校


 午前中に、店を閉めて今日も学校に向かう。昨日同様、空き教室に入り私のデスクに座る。

 すると、私のデスクは昨日よりものが置かれていた。PCが置かれ、そのモニターにはあのクラスの映像が流せてる。

 流されている映像には、何気ないクラスの風景が写せれている。分割されてる映像を見ると、誰かが振り向いてこちらをみる。


「『仮面の魔女ジャンヌ』の奴。絶対これ設置しただろう」


 私は、学生服姿の『仮面の魔女ジャンヌ』を見て苦笑いをする。ただでさえ機械に疎い私に、貼り紙を貼ってまで使い方を書いてくれいたのだから。

 しばらくは、ディスプレイを見ながら時間を過ごす。律儀にラスティアが淹れたコーヒーの入ってる水筒でコーヒーを飲みながら眺めてると、動きがあった。

 なんと、クラスの学生が柄の悪いクラスメイトに絡まれていた。

 絡まれているクラスメイトは嫌がってるが、それを無理やり従わせようとする。

 すると、絡んでるクラスメイトが強硬手段に出た。なんと、目を合わせてその子に洗脳の暗示を仕込んだのだ。

 そして、言われるがままその子を連れていきどこかへ行った。

 しばらくして、私は空き教室を出てタバコを吸いに外に出る。というの建前で、あのグループがどこかに行ったかを追う。

 校舎裏まで向かうと、何やら騒ぎ声が聞こえる。バレないように見てみると、なんとさっきの子がクラスメイトに孕められてるようだ。

 泣きながら、助けを求めてる子と、それを嘲笑うクラスメイト。

 私は、下を見ると吸い殻があったのを見つけ、タバコを吸いに来た演技をする。


「ねぇ、あんたこいつの連れ?」


「さぁ? 私はただ、タバコを吸いに来ただけさ」


 私がきた事で、わらわらと集まっていく。


「どうした? 続けないの?」


「なぁ、おばさんよぉ。邪魔だからどっか行ってくんねかな〜?」


「おばさんって、私まだ25なんだけど?」


「ひひっ。そうかよ! ならいてぇ目にあってもらおうか!!」


 調子にのってる男子高生は、私に向けて魔術を纏わせた拳を振るう。

 しかし、私はその男子高生の影を縛り動けなくさせる。


「な、なんだこれ!?」


「何って? 君らが使ってるのと同じことをしてるだけさ」


「ばっかみたい! ねぇ、とっとと消えてくれない?」


 女子高生は、目を使って私を洗脳する。しかし、魔力の量が桁が違うためか私には通じない。


「はぁ!? なんで聞かないのよ!?」


「甘いな。簡単な話さ。君のそれは私には効かないってだけさ」


「嘘だろ!? 俺らの魔術が勝てねぇってことか!?」


「まぁ、そういうことさ。大丈夫かい?」


 私は、被害を受けていた女子高生を助ける。そして、魔術を使っていたグループに最後通牒さいごつうちょうというなの脅しを仕掛ける。


「今日は見逃してやる。でも、次は覚悟しておけよ。それでも、喧嘩を売るなら――――――殺すぞ」


 彼らは、青ざめた顔で私たちをみる。

 こうして、私は被害を受けていた女子高生を保護して校舎に戻るのだった。         

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