第10話 作戦会議
10 作戦会議
新入生歓迎ダンスパーティを終えた学園生活は、平穏だった。
新入生達もイベント終了に一段落し、いよいよ学園生活にも慣れてきている様だ。
随分と緊張の糸が解れてきて、皆表情が豊かになってきた。
***
レオンハルトとレイカの作戦会議
朝の作戦会議、否もう定例会で良いだろう。
レオンハルトとレイカは朝食をとりながら、小声で話を重ねていく。
「レオンハルト様、クルミさんとも話合いをした結果・・・私達は住み分けをする事にしました。」
「住み分けとは?」
「はい。朝から午前の授業は、私です。クルミさんは、昼休憩から寮の自室に戻るまで。そこから就寝時間までを、アーネスト様とします。勿論、クルミさんが暴走を始めたら私がお止めします。」
「ふふふ、良い案だね。クルミ嬢の攻略意欲を止めるのは難しそうだし、そうなるとレイカ譲との作戦会議も必要だ。情報を共有しなければ、アーネストを守る事も出来なくなる。・・・
ダンスパーティの時、クルミ嬢がテラスへ行こうとしたのを止めてくれたのは、君だろう?助かったよ。私は皇帝陛下の側を離れる事が出来なかったし、テラス直前で急に踵を返して振り向いた時に君の顔を確認出来た時は、安堵したんだ。」
「見ていらしたんですか。・・・お恥ずかしい・・・私、慌ててクルミさんを蹴り倒して。」
「蹴り倒した??ハハハ・・・いや、凜々しい顔をしていたよ。」
レオンハルトが人前で声を出して笑うのは、珍しい事だった。それだけレオンハルトは本心からレイカを頼もしく思っている。
「お戯れはそこまでにして、次のイベントの説明を致します。」
レイカがそう言った時、シャルロットが通りかかった。
「レオンハルト様、アーネスト様。お早う御座います。」
「シャルロット様、お早う御座います。」レイカは慌てて立ち上がり挨拶を返した。
「お早う、シャルロット嬢。どうして此処に?」
「寮を引っ越して参りました。こちらの寮の方が、タウンハウスにも近く父の勧めで。」
「そう。宜しく頼むよ。」レオンハルトは微笑んで軽く頭を下げた。
「こちらこそ、宜しくお願い致します。では・・・」シャルロットは2人に頭を下げて去って行った。
この学園の寮は、第一~第五の寮があり全寮制になっている。
高位貴族は馬車で学園に通ったり、各僚に小さな庭園なども設けていて広大な敷地になっている。
各寮には、寮母もいて食事の世話などもしてくれている。
必要な者は、一名だけ侍女も付ける事が許されている。普通に生活するには、不自由はない。
シャルロット嬢は確か第五寮に居た筈なのだが、どうやら第一寮に引っ越して来たようだ。
彼女の友達である令嬢の方々や、ベガティ公爵令息も第五寮の筈だが・・・
そして今日は、侍女も見当たらなかった。以前は侍女も連れていた筈だが。
そもそも卒業までもう半年も残ってない、なのに何故今更・・・
色々な事が頭を巡ったが、今はアーネストの事を考えなくてはと思考を切り替えた。
次のイベントに向けての対策を・・・
学園に通う馬車の中、レオンハルトから話を切り出した。
「レイカ嬢、次のイベントとは?」
「はい。皇太后様の主催されるガーデンパーティで御座います。皇后様も、ゲストで招かれています・・・VIP待遇ですが・・・確かレオンハルト様は、招待客ではなく主催側のお手伝いだったと思いますが。皇帝宮南庭園で行われる予定でございます。」
「実は・・・その・・・乙女ゲームの設定では、皇太后様の権力は強くないと・・・
ご実家の権力もあまり強くなく、優秀なお人では・・・只、先の皇帝陛下はその人柄を愛されたと。とてもお優しいお人柄であると。この情報は、間違いではありませんか?」
当然の様に説明を続けるレイカに、驚きを隠せなかった。
「はぁ~。改めて思うよ。君達の情報は、確かなものだ。まだ企画段階のガーデンパーティの事や皇太后様の情報まで、知っているとは。ガーデンパーティの件は、まだ限られた人しか知らない。私も最近聞いた話だ。」
レオンハルトは、大きな溜息をついた。
勿論レイカの事を信じていた。・・・が、つもりだっただけかもしれない。
だが・・・改めて突きつけられた現実に思う。これは、いよいよ腹を括らなければ。
「レオンハルト様、学園に到着致しました。この話は後程・・・」
レイカが話を切った。
レオンハルトは頷いて目を閉じた。
当然だ。誰にも相談出来ない。聞かれる訳にはいかない。
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