第6話 シャルロット嬢

6 シャルロット嬢


朝の作戦会議を経て、アーネストをクラスに送り届ける最中・・・(この時はクルミ嬢だが)

シャルロットとすれ違った。


「レオンハルト様、アーネスト様。ご機嫌よう。」と

シャルロットが挨拶をした。


「シャルロット嬢も」とレオンハルトが挨拶を返すのをチラリと横目で見たクルミは

少しだけ頭を下げて、そのまま通り過ぎた。


「失礼。」と言ってレオンハルトはクルミを追いかけ


「クルミ嬢。挨拶は返してくれ。他の者も見ているから」と小声で言うと


「興味ありませんから。」と、ツンと顎を上げた。



   ***


その日のお昼休み、明日に迫り来る新入生歓迎ダンスパーティに備え、クルミは攻略に勤しんでいる。



レオンハルトは、ベンチで休んで居るシャルロットを見つけて朝の非礼を詫びようと近づいた。


「カメレオン伯爵令嬢は、本当に無礼ですよ。」シャルロットを取り巻く子爵令息が言った。


「その様な仰り方は・・・」シャルロットは少し困った顔をして、子爵令息を見ている。


瞬間、子爵令息はレオンハルトに気付き、気まずそうに

「では、私はこれで。」と足早に去って行った。


レオンハルトは顔色を変えずに

「シャルロット嬢、少し宜しいですか?」と言った。


「レオンハルト様、先ほどの話・・・」シャルロットが申し訳なさそうな顔をすると


「今朝はアーネストが失礼をして、申し訳ありません。」とシャルロットに頭を下げた。


「レオンハルト様、お止め下さい。レオンハルト様が、謝罪される様な事では御座いません。

アーネスト様も、色々と御座いましたし・・・心が不安定になっているだけだと・・・。」

シャルロットは心配そうな声でレオンハルトを励ますように言った。


「シャルロット嬢の優しい心遣いに感謝します。」レオンハルトが再び頭を下げると


「私に出来る事がありましたら、何なりと仰って下さい。アーネスト様の事も・・・

今朝の事も、不快になど思ってはいませんから。私とアーネスト様は、お友達ですから。」

シャルロットは、不安げな視線をレオンハルトに向けた。


「アーネストもシャルロット嬢を見習って欲しいものだ。」

本当はクルミなのだが・・・レオンハルトは溜息交じりに呟いた。


「私など・・・」シャルロットが頬を赤く染めて言うと


「お邪魔をしてしまいました。」と言ってレオンハルトは去った。




レオンハルトは額に拳を当てて考えていた。


クルミ嬢は相変わらず授業や勉強、公爵夫人になるべく淑女教育はレイカ嬢とアーネストに任せ

ゲームの攻略のみに集中している。


レイカ嬢は、クルミ嬢の暴走を止めるべく神経を尖らせ

私やアーネストへに気遣いをしつつ、他の令息令嬢達へのフォローに回ってくれている。


完璧な淑女の振る舞いの、シャルロットは勿論の事ではあるが

悪役令嬢であるアーネストに、(自然体だ)(誰に対しても優しい)と勝手な解釈によって


この頃には貴族令息達の人気は、完全に2分化していた。


その頃レイカは・・・

悪役令嬢なのにシャルロット様と人気を張り合っているクルミを、どれ程ゲームをしてきたのか・・・

攻略対象者や、ライバル令嬢達のキャラを熟知している・・・

クルミを認めざるを得なかった。私とは違った形ではあるが、ゲーム愛に満ちているクルミの事を。


クルミの協力が必要だ。レオンハルト様の為にも・・・






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