第4話 攻略開始
4 攻略開始
朝、身支度を整えてアーネストを迎えに行く。
一緒に寮内で朝食をとり、学園へと向かう。
この時間を、レイカ嬢との作戦会議に使うことになった。
「残り2つのイベントとお茶会を無事に切り抜けられたら、私達は消えると思います。」
「・・・消える?・・・」
「言い方が悪かった様です。
私達は、一度死んでいます。エンディングを見届けたら、成仏するのです。」
「済まない・・・レイカ嬢。大変な役どころを、押しつけてしまった。」
「レオンハルト様、私は今アーネスト様です。誇らしいのです。
憧れのアーネスト様として、大好きなレオンハルト様と一時でも一緒に過ごせる事が。
エンディングは、幸せそうなお2人の姿が見たいのです。」
レイカはそう言って意識をクルミへと渡した。
クルミは、朝早くからは起きて来ない。学園に着いて少し経った頃に目を覚ます。
クルミが攻略を始めると、レイカはそれを見張っていてくれる。
度が過ぎる様な事がないように、クルミを何時でも制止出来るように・・・
先ずは、一つ目のイベント。新入生歓迎ダンスパーティに向けて
クルミは、レオンハルト様は自分がアーネストであることで攻略済みとした。
誓って言うが、私はクルミ嬢に攻略された覚えはない。
司祭子息のエリオット様は、ストレートの金色の髪に緑掛かった黄色い猫の様な目が素敵。
騎士団長子息のヘンリー様も、捨てがたい存在。
でも一番は宰相子息、シャルマン様。黄色い髪と、シルバーの目が素敵なのよね。
エスコートはレオンハルト様に決まっているけど、絶対にシャルマン様と踊ってみせるわ。
クルミは、シャルマンの攻略を開始した。
偶然を装い、道でシャルマンにぶつかりそうになり、よろける。
「アーネスト嬢、大丈夫ですか?」シャルマンは腕をとって身体を支えてくれた。
「あっシャルマン様、申し訳ありません。」
「お怪我はありませんか?」
「はい・・・シャルマン様が支えて下さったお陰です。有り難うございます。」
「ええ、お気を付けて。」
次に狙うは、騎士団長の子息であるヘンリー様だ。青の髪を1つに纏めて、背が高いのが高ポイント。
ヘンリーが向こうから歩いて来るのを見計らって、涙を流しながら通り過ぎる。
「お待ち下さい、アーネスト嬢。何かあったのですか?」
「いえ、何でもありません。」
「泣いているのでは、ありませんか?」
「レディとして、はしたないですわね。・・・シャルロット様達と、最近距離を感じて・・・」
「虐められているのですか?」
「いえ、とんでもありません。私が悪いのです。少し淋しかっただけですわ。」
「僕で宜しければ、何時でも相談に乗りますよ。」
「有り難う御座います。ヘンリー様、頼もしい限りで御座います。」
ヘンリーはアーネストにハンカチを差し出した。
「あの・・・この事は、内緒にして下さい。」
「ははは、分っていますよ。ではまた、お会いしましょう。」
お次は、エリオット様・・・何処にいるのかしら。
エリオット様を見つけて、視線を送る。目が合うと、視線を反らす。
そんな事を繰り返しやっているのだ。
***
攻略は思いの外旨くいっている。
やっぱ、私って名プレーヤーだわ。クルミは、回りを確かめるように見渡して
スキップをしながら、教室へと向かった。
今日の所はこれ位かな。授業は面倒だから、レイカに任せればいいか。
学園の帰り道、アーネストがレオンハルトに声を掛けた。
「今日の就寝時間の一時間前に、私の部屋を訪ねて来て下さい。」
「レイカ嬢?あぁ、わかった。」
この頃になるとレオンハルトは、3人の顔の見分けが付く様になったいた。
今のはレイカ嬢、笑顔では口角を少し上げるだけのアルカイックスマイル。
目が悪いのか、ほんの時々目を細める様な仕草をする時がある・・・
クルミ嬢は、笑うと少し歯が見える。私に対する口調も大雑把だ。
再度言わせて貰う。私は攻略された覚えは無いのだが、クルミ嬢の中では攻略済みの様だ。
私の前では、取り繕うことをしないのである。
そろそろ就寝一時間前だ、レイカ嬢に言うとおりに部屋へ訪ねて行こう。
レオンハルトは、アーネストの部屋をノックした。
「どうぞ、お入りになって。」中からレイカ嬢の声がする。
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