第5話家出少女との同棲生活②
零がうちの家に来てから、ちょうど一週間。大晦日の日になっていた。零の敬語はタメ口でいいと俺から言って直してもらったし、かなり仲が深まっていた。
「嫌人、年越しそば食べる?」
それにしても零かなり家に馴染んだよな。
「いただくよ。」
「ハーイ。」
ていうか高2なのに学校のことは大丈夫なのかよ。
「はいどうぞ。」
俺の目の前に美味しそうな、湯気がたった年越しそばが運ばれてきた。
「「いただきます」」
学校のこと、それとなく聞いてみるか。
「零、学校のことは大丈夫なのか?」
すると途端に零の表情が曇る。
「大…丈夫だと…思う…。」
歯切れの悪い感じで、そう答えてきた。
「そうか。」
あまり深く探らないことにした。人には聞かれたくないことの、3つや4つ持っているものだからな。
「今日もゲームするか?」
実は毎日夜に一緒にゲームをするのが日課になっていた。
「いや、今日は遠慮する。」
めずらしいな。いつもならノッてくるのに。
「なにかするのか?」
「年越しといえば紅白歌合戦。」
そんな番組もあったな。小学生以来かな。それから俺たちはテレビを観て時間を潰した。
「「3、2、1。ハッピーニューイヤー!!」」
年越しを誰かと過ごすなんてクリスマスの俺じゃ考えられなかったな。
「私は除夜の鐘を鳴らしに行くけど、嫌人も行く?」
除夜の鐘とか久しぶりに聞いたな。
「行こうかな。」
偶にはダラダラする寝正月じゃなくて外に出るのもいいよな。
ーーーーーーーーーーーーーー
「えっ、除夜の鐘って、こんな行列できるものなの?」
そこにはドリーマーランドの、一番人気アトラクション並みの行列があった。
「これ鐘叩くの何時間後だ?」
「おそらく30分くらいかな。こんな行列でも一人あたりの時間が短いから。」
零の言う通り30分程度で鐘に、だいぶ近づいた。もうちょっとで鐘ならせそうだな。
「零、もうちょっとで鐘鳴らせるぞ。」
そう言って、零の方を見ると手が震えていた。
「寒いのか?」
「昔から寒がりなの。」
これは、一肌脱ぐしかないようだな。
「寒いならこれ着とけ。」
俺は着ていたコートを零に被せた。
「ありがとう。でも嫌人は寒くないの?」
「寒いけど、お前が寒そうにしているの見るよりはマシだよ。」
ついに鐘を鳴らす順番が来た。
『ゴーン ゴーン』
除夜の鐘ってお願いとかして良いものなのか?
俺の今の願いか…『零とずっと一緒に居たい』とかかな。
ん?なんで俺は零とずっと一緒に居たいんだ?家事をしてくれるからか?
まぁ、今は答えが見つかりそうにないかな。
「帰ろっか。」
そうして俺たちは家に帰った。
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