第3話 本庄繁長
※手習いの話ですがなんか個人的に違うと思ったので削除させて頂きました。
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時は遡り永禄10年(1567年)ー
「虎姫様、お待ちください!」
「えーよろくがおそいだけじゃないの〜!」
1月に入った越後国では雪が降り積もっていた。さすが豪雪地帯と言うべきか。昨日は降りに振り積もった積雪が今日は久々の晴天ということでそこで暇そうにしていた与六と共に雪遊びをすることにした。
父上や喜平次に聞いたところここまで降るのは見たことがないそうだ。かく言うわたしも前世のわたしがどこ出身であったかは覚えてないがここまで雪が降り積もるのは前世今世合わせても珍しいのではないだろうか。それだからわたしも物珍しさに負けて見た目年齢相応にはしゃいでしまった。そのため与六とはだいぶ離れた距離で会話をしていた。これで良く会話のキャッチボールできるよね。
「そんなことはないですよ。でも、そんなに走ったら転びますよ!」
「だいじょうぶだよ……わっ!」
与六の忠告も無視して走ってしまったそのためにツルッと滑って雪とキスする直前に誰かに抱き上げられていた。それか誰かというと……。
「しげなが……!?」
「大丈夫ですか?姫様。お怪我はございませんか?」
驚いたことに目の前に現れたのは本庄繁長だった。なぜ彼がここに?
「あ、えっと、わたしはだいじょうぶだからおろしてもらえるとたすかるんだけど……」
「左様ですか。気をつけてくださいね。雪が降ったあとの快晴は特に滑りやすいですから」
「ありがとう。しげなが。こんごきをつけるね」
そういえばそうだった。雪晴れの日は自動車の交通事故が特に顕著な上に道は滑りやすい。気をつけなければならなかった。わたしってば今世初の雪で浮かれすぎてその点が盲点だった。
「虎姫様大丈夫ですか!?」
「うん。しげなががたすけてくれたんだ」
「え、繁長様!?何故ここに?」
それはそうだ。本庄繁長と言えば上杉二十五将のうちの一人で本庄城の城主であった。本庄城があるのは現在の村上市でここ春日山城からだと下越の方でかなり離れたところにある。それに本庄繁長と言えば父上に対する2度の謀反が上げられるがこれらはどちらとも父上に征伐されて2度も許されていた。
2度も本庄繁長の乱が起こった際の原因は幾つかあるがひとつあるとするならば恩賞が出なかったことにある。来年ぐらいに起こるであろう反乱の原因はこれだ。
7年前の川中島の戦いにて上杉家臣の長尾藤景がわたしの父である上杉謙信の戦術を批判。これにより両者は対立。その後1568年に謙信の命令を受けた本庄繁長が長尾藤景、景治兄弟を謀殺。繁長自身も手傷を負ったが謙信はこれに恩賞を与えなかった。これが一番の起因だと考えられる。これに関してはなんの意味もない。なぜなら繁長は許されたからだ。ただ、これが起きた原因は他にもあって同じ年に武田信玄は駿河を攻めた。駿河侵攻に当たって上杉謙信に攻められることを懸念したため、恩賞に不満のあった繁長と安心して攻めたい信玄の利害が見事一致したからである。このおかげで上杉家は圧倒的に不利になる。正直この謀反を止める利点は無い。強いていうならその後の越相同盟と武田家に影響してくるくらいだ。……止められるっていうならできる限り止めようかな。
んーもし、第1次本庄繁長の乱を止めるのならそもそも藤景、景治兄弟の暗殺は今から未来の話だ。それを止めるという手がある。ただ、これはもう無理だろうな。父上とこの2人の対立はわたしが産まれる前からある。……だとすれば本庄繁長に恩賞をしっかり与えるという手がある。というのも父上は私利私欲で攻めなかった。いくら戦争に勝てどその領地を元の領主に戻して、上杉家自身の領地は増えずにいた。そのため武将がいくら武功を立てても恩賞が出てなかった。この政策を父上が見直すのは10年後のことである。だが、それでは遅すぎる。なにしろ父上が死ぬ寸前で思い直すわけだからだ。
「ああ、実は御館様に呼び出されていたので登城してきたのですよ。それでたまたまここの廊下を通りがかった際に姫様が転びそうになっているのを見つけて慌てて支えたんです」
「なるほど……それでよびだしは?」
「ちょうど終わったところですよ」
「じゃあ、これからかえるところなの?」
「いえ。しばらくの間はここ、春日山城下にある屋敷に留まるつもりですよ」
「ふーん……じゃあ、しげながもあそぼ!」
「虎姫様!?」
わたしの提案に1番驚いたのは与六だった。人手が多くても困ることは無いだろう。
「それがしもですか?いいのですか?」
「うん。むしろてつだってほしいくらいかな」
「そういう理由なら構いませんけど、ちなみに一体何をやるつもりで?」
「ゆきだるまだよ」
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