第11話


 「あの…」



 少女は笑うでもなく、そっと手を差し伸ばす。


 その時サッと風が舞った。



 ——白



 視界に映ったその「色」は、靡くスカートの向こうに映えていた。


 瞬きもできなかった。


 ほんの一瞬の出来事だったから。



 「見たな?」



 …え?



 少女は眉間に皺を寄せながら、さっきまでの穏やかな表情が嘘のように崩れる。



 殺される



 不意にそう思ってしまった。

 

 不可抗力とはいえ、見ちゃいけないものを見てしまったから。



 「ちょっと待ってッ!!」


 「さて、どうしようか?」


 

 どうしようか…??


 どうしようって何をどうするの!?


 呂律が回らない。


 弁明しようにも言葉が出てこない。


 見たけど多分何も見てません!


 一瞬だったし、本当にそれがパンツだったかどうかも怪しいっていうか…!



 せめて急所だけは避けようと咄嗟に腕を上げた。


 刀が動くのが見えたからだ。


 


 短い人生だったな…




 チャキッ




 眼球の先に伸びる鋒。


 刃こぼれ一つないその刀身が、まっすぐ伸びてくる。


 刃文の下に反射する光が、銀色の艶を照らしていた。


 なんでも斬れそうだった。


 人間の首なんかは、いとも容易く…



 「何か言い残すことは?」


 「ヒッ…!」

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