第7話


 シュッ




 少女は、攻撃態勢を再び取る大男の懐に一歩、——近づく。


 刀の刀身は体の後ろ側に伸びていた。


 大男は切り落とされてる右腕もろとも、背中をのけぞらせて反動をつけている。


 3mを超える長身が巨大な影を作り、すっぽりと少女の体を覆っていた。


 それでもなお、少女は視線を下に向けている。


 互いの射程圏内。


 その中心に交錯しようとしている、目まぐるしい攻防。



 大男の踵が、丸み帯びたアスファルトの表面を掴む。


 その“姿勢”は伸びやかで、それでいてしなやかな曲線を描いていた。


 少女が蹴り上げた地面の土は、すでに空中の溝を掴んでいる。


 重力が真っ逆さまに“停止”する。


 その懐に飛び込んでいる影が、刀の柄の内側を捉え。



 大男が取っていた反動は、少女に向かうことなく停止した。


 動きは継続していた。


 大男の姿勢は地面に向かって流れながら、少女の体を視界に捉え続けていた。


 けれども、少女に向かって踏み込もうとしている下半身の動きとは裏腹に、振り上げた腕の位置は、1秒の中に留まったままだった。


 先に踏み込んでいたのは少女だ。


 前に進もうとする力。


 その方向に向かって、左膝の重心が伸縮する。


 

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