第14話 冷たい継母と異母姉

 今日の朝、わたしはお風呂に入った後、粗末なパンと牛乳を食べた。


 牛乳はともかく、パンはまずくて食べる気がしなかった。


 それでも食べないわけにはいかないので、我慢をしてなんとか食べた。


 この二日間は、朝食や昼食はなくて夕食しかなく、ここでその粗末な食事をしていたのだけれど、今日はこれから追放されるということで、朝食として食べている。


 相変わらず、まずくて食べられたものではないが、食べなければ途中で歩けなくなってしまうと思うので、無理やり食べた。


 苦しかった。


 また短い時間ではあったものの、お風呂に入ることも許された。


 継母は、朝食とお風呂のことをわたしに言いにきた時、


「あなたに朝食をとらせてお風呂に入らせるのは、わたしの慈悲よ。わたしはあなたと違ってやさしい人だから。ありがたく思いなさい」


 と言っていた。


「ありがたく思いなさい」


 と言っているけど……。


 このお風呂や朝食のことは、わたしにというよりも、公爵家の人々に、自分のやさしさを印象付けたい、という思いが強い気がする。


 隣にいた異母姉も、


「お母様はすごいです。追放される人間にそこまでお恵みを与えるとは。殿下に歯向かい、公爵家に恥ずかしい仕打ちをした人間なのですから、食事など与えなくてもよろしかったのに。まして、お風呂まで与えるとは。お母様ったら、なんと慈悲深い方なんでしょう」


 と継母を褒める。


 異母姉の側近も隣にいたが、


「お嬢様のおっしゃる通りです。このようにやさしいお方がこれからもこの公爵家を統治していくことになれば、この公爵家も公爵領もますます発展していくでしょう。領民も慕ってくるに違いありません」


 と微笑みながら言った。


 この側近は、継母の言うことにはすべて従う人。


 そして、継母の機嫌が良くなることしか言わない。


 継母のお気に入りだ。


 継母は、


「二人ともうれしいことを言ってくれますね。わたしのいいところをよく理解してくれている」


 と言ってわたしの方を向き、


「二人はこうしてわたしのことを理解してくれているのだから、あなたも理解をきちんとしなさい。今まであなたは、わたしのやさしさを理解しようとしなかった。それどころか、わたしを苦しめてきました。そんなことだから婚約を破棄され、この家を追放されてしまうのよ。全く、なんでこんな子が今まで継母とは言え、母として接しなければならなかったのだろう。今までのことを思うと、腹が立ってくるわ」


 と少し厳しい口調で言った。


 異母姉も、


「長い間、お母様だけでなく、わたしのことも理解しないできた人です。わたしも我慢してきましたが、お母様もよく我慢してきました。この人は、ますます公爵家の恥だという気持ちが大きくなります」


 と言った。


 二人とも何を言っているのだろうという気しかしない。


 やさしい人は、そもそもわたしに、幼い頃から冷たい仕打ちはしないと思う。


 わたしは今まで、継母や異母姉となんとか仲を良くしようと一生懸命努力してきた。


 しかし、このセリフを聞くと、それが全く通じていないと思い、悲しくなってくる。

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