第28話 持続可能な支配(前編)
一行が引き上げたようなので、五人は電磁シールドの解けた壁の開口部分に向かって歩き出した。
「先ほど言っていた中央のAIというのはなんなんですか?」ノルンがタニグチに聞いた。
「ああ、AIってのはね人工知能の事なんだけど…コンピューターって分からないか…なんていうかな人工的に作った脳みそみたいなもんかな」
「人が造った意識体みたいなものでしょうか?それが情報を統括して各個体の意識も共有していると?」
「お、なんか近い感じかも。そいつを僕らはマザーコンピューターって呼んでるんだよ」話を聞いていたタクヤが答える。
「男しかいないのにそこはファザーじゃないんだ?」ファティマがそれを聞いて笑う。どこまで理解しているのか分からないが、彼女は時たま鋭いところを突く。
「中央コンピューターと言えばマザーだよ。マザーコンピューター”ティアマト”」タクヤは怒ったように言う。
「あれ?お母さんの事話したっけ?」ファティマが言う。
「ん?何の話?」タクヤは訳が分からないといった感じだ。
「いや、だって今ティアマトって…」
「ああ、マザーコンピューターの名前だよ。愛称みたいなもんかな?学校で習った」タクヤが答える。
ノルンとファティマはそれを聞いて足を止めてしまった。
「凄いな。こんな偶然てあるんだね」ファティマはノルンにそう言った。
「偶然…なのかな?いやいやそんな事あるわけないでしょうね」
ファティマとノルンが立ち止まったので、他の三人も歩みを止めた。
「どうしたのかな?救出成功のパーティーに着ていくドレスの相談かな?」ノルンは相変わらず面倒くさいタニグチの発言を無視したが、ファティマは笑っている。しかし突然に何かを思い出したように
「そう言えば母さん”アルファ”って言葉に反応してた」と言った。
それを聞いてノルンは考え込む。
「どういう事なんだろう?アルファとオメガには何か私たちが知らない事実があるのかな…お母さんたちも何か知っている?」
「ま、明日帰ったら聞いて見ようぜ。あ、転移遊びがばれちゃうか…」
一行は基地内に入ってから、ノルンの案内でダニエルのところまではすぐに辿り着いた。独居牢にでも入っている姿を想像していたが、ソファーに座って紅茶を飲んでいる。駆け付けた5人に向かって『よっ』と右手を上げた。
「早かったな。まだ洗脳されてないぜ。そこのお二人さんも久しぶり…って事も無いか」そういってダニエルは笑った。
「捕虜という割には随分と待遇がいいんですね。前に伺った小屋よりも居心地がいいんじゃないですか?」ノルンが言う。
「SCGsではレジスタンスも大切の社会の構成メンバーだって言ってるからな。ここでもずっとサブローやハチローと世間話をしていたぜ。今年は雨が少なくて野菜の収穫量が少ないそうだ…」そう言ってからダニエルは紅茶を一口啜った。そうしてまたファティマとノルンの方を見てこう言った。
「あんたら二人にも随分と興味があるらしいぜ…あ、もちろん何にも喋ってないけどな。特に拷問もされなかったし」ダニエルが言った。
「お前ら殺し合ってるんだよな。なんかイメージと違って調子狂うな…」ファティマが言った。
「アンドロイドは修理すればいいけど人間はそうはいかないから、抵抗さえしなければ大切にするんだってさ」タクヤが言った。
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