第24話 再会(後編)

「レジスタンスっていうんだっけ?それにはどうやってなったんだ?」ファティマが聞く。

「大体はスカウトだね。なんかつまらなさそうにしてるやつとか、文句がありそうなやつに声をかけるんだよ」タクヤが言う。


「向こうも反乱分子を後から捕まえて洗脳するくらいなら、最初から洗脳しておけばいいですよね?支配者が自分たち以外の人間を労働力としてしか見ていないのであれば、その方が合理的です。彼らの存在が無ければ新しい人間は産まれないんですから」ノルンが言う。


「そこは不思議なのよね。労働力という割には殆どは機械がやってるし…。環境破壊になるという事で、森なんて滅多な事じゃ焼き払わないわよ。だからこんな事私は初めて」トニーが言った。


「なんか世界にやさしい支配者なんだな。変な感じだ」ファティマが言う。

「Sustainable Control Goals… 持続可能な支配っていうらしいよ。略してSCGs。学校で習った」タクヤが言った。


「どこかで聞いたような言葉だけど胡散臭いな。労働も何もさせないなら支配する必要もないじゃん。何がしたいんだろうな?」

「とにかくまずはダニエルを助け出しましょうか?」ノルンは食べ終わった食器を、指先から発した洗浄魔法できれいにしながらそう言った。トニーは驚いた顔でそれを見ている。


「あそこにいる連中は、この間の偵察用とは違って戦闘用だよ。谷に来た連中と違って光学兵器は通用しない。破壊できるのは質量勝負の電磁加速砲ぐらいだね。多分君たちがこの間使った火炎砲や電撃砲も通じないと思うよ。あの空から降らせたやつぐらいの温度があれば、なんとかなるかもしれないが、捕まっているダニエルも黒焦げになっちゃうな」タクヤが言った。


「それならまぁこいつかな」そう言ってファティマは、ナップザックから一本の黒い剣を取り出した。全長は人の背丈ほどもあるだろうか。小さなナップザックからその大柄の刃物が出てくるのを見て、三人の男は驚きを隠せない。


「それも魔法の一種なのかい?」タニグチが聞く。

「ああ、ザックの事か?まぁそんな事よりかっこいいだろう。黒エクスカリバーっていうらしいぞ」そう言ってファティマは片手で剣を持って感触を確かめている。


「それって聖剣エクスカリバーと対になる伝説級の剣じゃない。どこから持ってきたのよ」ノルンまでもが驚いている。

「うちの物置でホコリ被ってたぞ。ノルンにも合いそうなの持ってきた」そう言って今度はナップザックから一振りの日本刀を取り出した。

「えーとね、銘はなんだっけな?サダミツだったかな?」ファティマは鞘から刀身を抜いて、銘を確かめている。


「あいつらの体はそこいらの動物違って、炭素繊維の装甲を纏っているから、金属製の刀じゃ傷ひとつつかないと思うわよ」トニーが刀を見て言う。

「炭素繊維ってなんだ?そんなに固いのか?」

「僕のナイフ炭素繊維製だよ」タクヤはそう言って、自分の腰に差していたナイフを抜いて見せてくれた。


「ちょっと見せてくれ」そう言ってファティマはナイフを受け取ってまじまじと見つめる。

「確かにこれ固そうだな…どれ」と言って、先に出した黒エクスカリバーの刃先とナイフの刃先を合わせてみる。するとタクヤのナイフは紙を試し切りするかのように真っ二つになった。


「あー!!何てことすんだよ。そのナイフ大切にしてたのに!いや、その剣確かに凄いけどさ」タクヤが叫ぶ。


「凄い切れ味だな。それは何の金属でできてるんだい?」タニグチが聞く。

「確かオリハルコンじゃ無かったかな…。あ、でもサダミツの方は鋼だから強化魔法かけないとここまでは切れないだろうな」ファティマの説明にタニグチとトニーは聞き入ってるが、タクヤは二つになった自分のナイフの残骸を見つめている。


 それを見てファティマはナップザックから小さなナイフを取り出した。

「ごめんごめん。ナイフも持ってきてるからさ」そう言ってナイフを意気消沈のタクヤに渡した。

「ミスリルダガーだ。買ったら結構高いんだぞ。その炭素なんとかのナイフよりは切れるだろ?」


「そのナップザックには何でも入ってるんだな。次はケーキでも出てくるのかな?」タニグチは笑う。

「お、何で分かったんだ?でも、ケーキじゃなくてパイを焼いてきた」そう言ってファティマは今度は直径20cmくらいの、小ぶりなアップルパイを取り出した。


「食後のデザートにみんなで食べよう」そう言って事もあろうにエクスカリバーでパイを六等分しはじめた。ノルンはそれを見て頭を抱えている。


「はい、一人ひと切れずつな。残りの一個は包んでザックに戻しておくから、ダニエルを助けたら食わせてあげよう」


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