第2話 無理ゲー…?



───リア充に、なってしまった。



この、俺が。





目の前の可憐な少女は、田中の返事を聞くと目を輝かせながら言った。




「……ほ、本当ですかっっ!!!」






……だめだ。今更断れん。


この純粋な眼差しを裏切るなんて、俺のメンタルが許さない。




「……あ、あなたの、名前……は……?」





おずおずと、声を絞り出す。







「あっ、!

そうですよね……!


緊張しすぎて名前を名乗るのも忘れてたなんて……。す、すみません……」









「───私、早乙女 陽葵と申します。

……あの、隣の2年6組で、えっと、、、


……あっ、太陽の陽に、葵って字です!

、、、よっ、読み方はヒマリです!!」







……俺って、はたからみたらこんな風に喋ってんのかな。


だとしたらかなりキツい……




でも、この子は、











───可愛い。









おっちょこちょいコミュ障少女。








可愛い。










俺は、この日初めて恋を知った。




それは甘酸っぱくて、みずみずしくて、


……つつくと割れると分かってもいても止められない、果実の様だった。







今この瞬間、まさに高校生らしい恋愛を謳歌していたのだ。



今まで目の敵にしていたリア充に謝りたくなるほど。






         ・ ・ ・




「……それじゃ、6時限目が始まる前に教室に戻りましょうか!」




「ちょっと待った。」







「……え?」







「あの、ヒマリ……さん、


まさか、授業に戻るつもり……?」







「はい!授業は楽しいですし!



あ。あと、ヒマリでいいですよ!」










ヤバい。この子、本気だ。


おい俺、考えろ。


何とかして止める方法は……












「……いだだだだ!!!」






「えっ?!


ど、どうされたんですか?!」





「えと…………お、お腹!!!


えっと……お腹がイタイカモナァーーー!!」







ごめん。


俺の特別スキルは、仮病しかないんだ。






───お腹を押さえながらチラッと彼女の方を見やる。





目の前の美少女は、顔面蒼白で手を震わせていた。




「……えっ?えっ、、



ヒマリさ……ヒ、ヒマリ!!



大丈夫??」










「………………呼びましょう。」







「……?」





「今すぐ救急車を呼びましょう!!!!!」






…………。





「ごめんなさい。仮病です。」






         ・ ・ ・




何とか陽葵を言いくるめて、校門まで来ることに成功した。


今日という日に色々な出来事が詰め込まれたせいで、田中はすっかり疲弊していた。


(もう6時限目と部活は休んで帰ろ…………)



……とはいえ、自分のせいで彼女にこれ以上授業をサボらせる訳にもいかない。






「あ、あの……


学校はまだ帰る時間じゃないですよ??」




不思議そうに見つめる陽葵を横目に、途方に暮れた。






その時。







ダダダダダ………………………………




騒がしい足音。






(嫌な予感がする。)






「───あッ?!


田中先輩じゃないっスか!!!!




おはようございやーーーーーす!!!!」






頭によぎったのはダンジョン攻略ゲーム。




────クリア目前でダンジョンボスに遭遇。





BOSS 1 ───────リア充撲滅委員会書記

           

            遠藤 タケル






(あ、、、。


終わった───……)

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