第16話 やべえやつ

「なあ、ちょっといいか?」


「・・・・・・え?」


 下校するために靴を履き替えていると、後ろから見たことの無い男子生徒に話しかけられる。同じクラスの人間では無いことだけは分かる。


 しかし、かなりの美形であり尚且つスタイルも良い。180近くはありそうだ。


「・・・・・・・・・え?」


「ちょっと話があるんだが、来て貰えるか?」


「断らせてもらいます」


「ならここで聞く、今沢と付き合っているのか?」


 去ろうとした際に、後ろから聞いてくる。もちろん答えはNOである。彼は何かを勘違いをしているようだ。


「いや、付き合っていない」


「なら、この前非常階段で何を話していたんだ?」


「・・・・・・なんの事?」


「わかりやすいなお前」


 少し動揺してしまい、嘘が簡単に看破される。だが、なぜこいつは今沢に興味があるのだろうか。


「なあ、今沢のこと好きなのか?」


「ああ、そうだ」


「あら、正直」


「俺は2年の佐久間だ。サッカー部のキャプテンをやっているから多少は顔が広いと思っていたが、お前は俺の事は知らないのか?」


「そっちには全然興味ないな。好きなら付き合えばいいのに、サッカー部なら余裕だろ?」


「いや、今沢は部活とか、カーストとか、そういうことは気にしなさそうなタイプだからな・・・・・・」


「落ち込むなよ」


 佐久間の顔を見てみると、少ししょんぼりしていた。正直言えばめちゃめちゃ面白い。


 ただ、こいつの恋愛事情なんてどうでもいいので早く開放されたいところだ。


「なら、お前もそういうこと気にしないような男になれば良いじゃないか」


「そ、そうだな。どうすればいいんだ?」


「自己紹介した時サッカー部のキャプテンやってるとか言わなきゃいいんだよ」


 なぜ気付かないのか俺には理解不能だった。もしかしてこいつの中でそれがテンプレートになっているのだろう。


 そもそも、このレベルの高い男ならすぐにでもアタックしに行って、中身を見てもらえればいい話だ。


「・・・・・・なるほど」


「なあ、帰っていいか?」


「いや、お前にはもう少し付き合ってもらう。とりあえず今日は部活が無いから、カフェにでも行くぞ」


「・・・・・・は?」


「お前なら、恋愛相談にちょうどいいからな。それに、どうせ暇だろ?」


「・・・・・・いや〜。俺は今日用事が・・・・・・」


「そんなものないだろ」


「・・・・・・多分ある」


 そして俺は佐久間に連行されて、帰ることが出来なかった。

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