第8話 ヴァルッテリ
橙色の髪に、緑色の瞳の男性が、横抱きにした人物を、寝台の上に寝かせる。彼の名は、ヴァルッテリ。このハンニカイネンの魔王の館で働いている自動人形である。
この度、魔王ラーファエルより、今寝かせた人物の世話及び監視を命ぜられた。
ヴァルッテリとしては、願ったり叶ったりである。この人物は明らかに創造主の関係者だから。
プラチナブロンドの髪の男性は、規則正しい寝息を立てている。その整った容姿は、自分の創造主と、とても似通っていた。でも、創造主とは色が違う。だが、ここまで似通っているのだから、きっと創造主の血縁なのだろう。報告しなくてはならない。
ただ、彼も魔王だとラーファエル様はおっしゃっていた。創造主も魔王だったが、何か事情が変わったのだろうか?
それに、どうやって創造主と連絡を取ろうか。こちらから働きかけはできないし。彼が創造主の関係者であれば、その内連絡が入るだろうか?
上掛けを彼の身体にかけながら、ヴァルッテリは自問自答する。
「ハンニカイネン。」
誰もいないはずの部屋の中から、ヴァルッテリに向かって声が投げられる。
後ろを振り返ると、そこには黒い髪、水色の瞳の少女が立っていた。色や髪型が変わっているが、創造主の第一の配下であるアメリアだ。
ヴァルッテリに呼び掛けられたのは、この地の名前。アメリアは、それぞれの地にいる自動人形の名前全てを把握しているわけではないので、まず一声はその地の名で、自動人形たちを呼ぶ。
「アメリア様。ご機嫌麗しゅうございます。私は今、ヴァルッテリと名のっております。今後はそちらでお願いします。」
アメリアは、口の中で彼の名を何度か復唱した後、口の端を上げた。
「ヴァルッテリね。わかったわ。今日は、こちらに人探しに来たの。」
「こちらの方ですか?」
ヴァルッテリが寝台に寝かせた人物を示すと、アメリアは軽く頷いた。
「やはりここにいたのね。その方は、エンダーン様の弟君であるカミュスヤーナ様です。」
「なるほど、弟君でしたか。とてもエンダーン様に似ていらっしゃいますね。」
「貴方は、カミュスヤーナ様がなぜ捕らわれたか知っていますか?」
「ええ、魔力を引き出す贄として捕らわれたと聞いています。」
ヴァルッテリの言葉に、アメリアは顔をしかめた。
「魔王なのに、他者から魔力を奪っているのですか?」
「魔王様のためというより、イヴォンネ様のためですね。」
「イヴォンネ?」
「魔王様の妹ということになっています。実際は違いますが。・・あの、アメリア様。あまりこの部屋に長く留まっていると、不審に思われますので、夜に自室にいらしていただけますか?その時に詳しくご説明します。」
ヴァルッテリの言葉に、アメリアは軽く頷いた。
「わかったわ。では後で。」
アメリアはそのまま姿を消した。ヴァルッテリはそれを見送ると、カミュスヤーナに目をやった後、部屋の外へと出た。
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