勇者ノルン、多世界へ赴く!!〜追放された勇者パーティーは何処へでも、何時何時でもお仕事します!たとえ異世界であろうとも!〜

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第1話【エピローグから始まるプロローグ1】



◇エピローグから始まるプロローグ1◇


 世界は混沌カオスに満ちていた。

 【最凶魔王ザルズァーク】の魔の手によって、世界は支配されていたのだ。

 しかし、そんな魔王の支配から世界を救った一行がいた。


 その名も――勇者ノルンのパーティー。

 彼女は十歳で勇者となり、十五歳となったその年に……魔王ザルズァークを打倒した。たったの五年で、二百年続いた魔王の時代を終焉しゅうえんさせたのだ。


 仲間と五年の旅。

 所属している【パルーク王国】から旅立ち、魔王の支配する闇の国へ。

 そして到達したその日に、魔王を消滅させた。


 勇者ノルンは、控えめに言ってもバケモノだ。

 人を超えた新人類とまで言われ、素手でドラゴンをほふり、息で魔法を掻き消す、マグマを泳ぐなど……怖いほどの噂が流れた。


 魔王ザルズァークも、人類が恐怖するほどの強さだったが、勇者はそれ以上だった。本当に……それ以上の怪物だった。

 打倒された魔王の訃報ふほうを受け、魔族たちは撤退を始める。瞬く間に世界中にその報告で溢れ、世界は祝砲を上げた。


 勇者ノルン一行は【パルーク王国】へ舞い戻った。

 城下町で歓迎され、昼夜を問わずパーティーで持てはやされた。

 報酬も支払われ、勇者ノルンは毎日を笑顔で過ごしていた……そう、いたのだ。


「……お金、無いなった」


 魔王を倒し二年の月日が流れた。

 勇者ノルン・ヴァーティカルは……金欠だった。


「どーしよ。あれだけあったお金が、もうこれだけなんだけど……」


 財布を逆さにすると、銅貨がコツンとテーブルに落ちた。

 実に二枚……銅貨二枚が、勇者の手持ち金である。


 酒屋の看板娘。

 それが本来のノルンの役割のはずだった。

 しかし、彼女は人知を超えている……肉体面でも精神面でも。


 昔、城下町の外に大熊が現れた。それを片手で倒したノルンは、王国の騎士団に見込まれ騎士団に入る、あっという間に国の一番となり、そこから勇者として活躍したのだが……彼女はとにかくぐーたらだった。今もだが。


「あーあー。やだなーもう……やる気でないー、お腹すいたー……眠ーい」


 この言葉からさっするように、彼女は非常になまけ者である。

 更には大食い、好き放題散財さんざいする浪費家と……金銭管理は出来ない人間だった。


「お兄ちゃんもお姉ちゃんも、お金貸してくれないし……お母さんは怒るし、お父さんは泣くし。なんでかなぁ?」


 ヴァーティカル家は酒場を経営している。

 夫婦で切盛りし、兄夫婦、姉夫婦の二世帯でマメに働く、城下町のいこいの場なのだが……次女であるノルンはこれだ。


 彼女は、所謂いわゆる甘えん坊の末っ子。

 ぐーたらでだらしなく、生活感のない超マイペース。

 炊事洗濯掃除はからっきし、風呂嫌いで大雑把。

 人の手がなければ餓死するような……


 ハッキリ言ってしまえば――ダメ人間である。

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