第44話 一緒にお風呂に入りました



《有間愁斗―視点》


 大きなバスタオルを肩まで巻いた彼女は怯えた顔で言う。


「お風呂の電気……つかないです」

「えぇーー!?」


 浴室に入ると脱衣所の明かりで中は見えるが扉を閉めると七色のステンドグラス窓から差し込む外の明かりだけで薄暗い。


「蛍光灯が切れてるのかな?脚立と替えの電球があればいいんだけど……フロントに聞いてみようか?」

「そうですね……」


 で、備え付けのホームテレホンでフロントに電話するが……出ない。


「ダメだな。フロントに行ってみるか……」


「……暗いけど……このまま入りますよ。少しは見えますし」

「大丈夫?」

「全然大丈夫じゃないです。ここお化け屋敷みたいで一人じゃ恐くて入れないです」


 えっと、つまり……。


「いっ……一緒に入る?なるべく見ないようにするから」

「べっ、別にいいですよ!カップルで一緒にお風呂入るのなんて、ふ、普通ですし!」

「そ、そうだよね!ふ、普通だよね!」


 なんかとんでもないことになったぞ!!


「でも今日はエッチなことはしたくないんです……」

「ん?どうして?」

「だって有間さん、私のことバカ女って言ったし……」


 まだ怒ってるぅ!でも当然だよな。紫陽花は大泣きして、なのにエロいことさせろって都合が良すぎる……。


「わかった。今日は絶対にそういうことしないから」

「ラブホまで来たのにいいんですか?」

「うん。紫陽花の気持ちを一番大切にしたいから大丈夫だよ」


 紫陽花は恥ずかしそうに少しモジモジしてから。


「あの……その……この下にこの前買った下着を着てるんですけど……見たいですか?」


 いや、滅茶苦茶見たいわ!超見たいです!


「見せて欲しい……」

「い……いいですよ」


 彼女はバスタオル取る。

 白のレースフリルが付いたローライズのパンツ。両サイドは紐になっている。

 ブラも白で同じフリルが付いている。ちょっとお嬢様とうか天使っぽい感じで凄くいい。


「可愛い……。滅茶苦茶似合ってる。小並感な感想しか言えないけど、本当に凄く可愛いよ!」

「わ、私の持ってる下着の中ではちょっと高い方です。えへへへへ」


 恥ずかしそうに笑う彼女が凄く可愛くて、俺は抱き締めた。


「んんッんあッ、ど、どうしたんですか?……お風呂入りますよ?」

「紫陽花が可愛いから…… キスしていい?」


 そう言うと彼女は顔を上げ目を閉じ「ん」っと唇を差し出す。


「ちゅっ ちゅっちゅっ ちゅっ ぷちゅっ ちゅっちゅっちゅっ ぷちゅっ ちゅっ ちゅっ ちゅっ ぷちゅっちゅっ ちゅっちゅっ ちゅっ ちゅっ」


「ちょっ、ぷっふふふふ、いつまでやるんですか?ふふふふ」

「や、だって滅茶苦茶可愛いからずっとやってたいよ」

「もう、じゃあ、お風呂出てから続きしましょ」

「そうだな」


 お互い笑って。


「下着、俺が脱がしていいの?」

「お、お願いします……」


 俺は抱きしめたままブラのホックを外す。この作業は何度か経験済みで手慣れたものだ。

 しかしここからの作業は初体験となる。


 俺はブラ紐を肩から外していく。紫陽花が手を動かして腕から紐を抜く。

 ブラが取れた。


 こ、これが紫陽花の……おっぱい!!


 上から見ているが、結構大きくて形も綺麗だ。


「明るいから恥ずかしい……」


 そう言いながら彼女は両手で胸を隠した。


「次は下か」


 俺は屈んで紐パンの片側、蝶々結びの紐端を引っ張る。

 紐が解けるとパンツの片側がパラっと捲れて、彼女の下腹部が大きく露出した。あと1センチ下げれば全部見えてしまいそうだ。既にヘアの端は見えている。


 結構薄いんだな……。

 次は反対を――――。


「有間さんも脱いでください」


 と生まれたままの姿の彼女は言う。


「今、立ってて恥ずかしいから」

「ダメですよ!」

「わかったよ」


 俺も服を脱いで生まれたままの姿になった。


「入ろうか」

「そ、そうですね」



 風呂はかなり広くて二人で体を洗っても十分なスペースがある。

 体と頭を洗い終えて一緒に湯船に入った。


 俺が紫陽花を後ろから抱っこする態勢でお互い足を伸ばせるから湯船も凄く大きい。


「有間さんの松茸、背中に当たってます」

「ごめん……」

「エッチなこと我慢できるんですか?」


 今こうして後から胸を揉んでても何も言わないし、十分エッチなことをしていると思うが、彼女が言いたいのはセックスの話だろう。


「我慢できないかも……」

「むっ!さっき何もしないって言ったのに!もうおっぱいもダメ!有間さんは私に優しくしないといけないんですよ?」

「うん……そうだよね」


 俺は胸から手を離して彼女のお腹の当たりに腕を回した。


「そうですよ!凄くショックだったんですから!人生で一番ショックでした」

「そんなに?」

「私、悪口とか言われてもすぐに忘れるんですけど、有間さんの「バカ女」は一生忘れないと思います」

「じゃぁ、一生優しくしないとな……」

「できるんですか?」

「頑張ります……」

「……」


 25年間生きた俺は人生で初めて他人にキレて怒鳴った。俺はキレるような人間ではないと思っていたが、どうやら違った。

 これからは自分がそういう性格だとちゃんと理解して、彼女を傷付けないように気を付けて生きていこう。

 俺は心に深くそう刻んだ。




 風呂から出て寝支度をしている時に紫陽花がスマホを見て言った。


「お姉ちゃんからLINEが来てる。えっ、これって……」


「どうしたの?」


 紫陽花はLINE画面を見せてくれた。


向日葵【ヤバそうな人達がうちに来たんだけど、しおの知り合い?】


向日葵【画像】


 画像にはモニターに映った不良っぽい男達が。


「これ、うちのドアフォンの画像なんですけど……」

「これってアイツだよね?他の人も知り合いなの?」


 一番前にいるのは紫陽花に嫌がらせをした西って奴だ。


「西君以外は知らない人です」


 なんだこいつら?紫陽花を攫ってレイプでもする積りだったのか?

 因みにこの西、あの日曜の次の日に紫陽花のバイト先スーパーを辞めたらしい。警察に捕まったものだと思っていたが……。


「今週はバイト入ってないよね?」

「はい」

「なら家から出ない方がいいと思う」

「怖いですね……そうします」

「明後日、俺も帰るから……、来週はバイト終わり必ず迎えに行って紫陽花を守るよ」

「有間さん喧嘩とかできるんですか?」

「いや、喧嘩も格闘技もやったことないけど、万が一そういう事になっても紫陽花が逃げるまでの時間稼ぎくらいはできると思う」


 実際に護衛の男が一人いて、周りにも誰がいれば無茶はしてこないだろう。

 ただ夜は人気がなくなるからな……。


 昔、厨二的発想で思い付いたあの武器を作ってみるか。本当にヤバいときは役に立つ筈だ。


 それから俺達はベットでイチャイチャしたり、俺のにゴムを被せて遊んだりした。



 約束通りセックスはしなかった。






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