第8話 振り返ると有間さんがいた
《砂月紫陽花―視点》
帰宅した私は服を脱ぎお風呂に入る。
湯船に浸かりながら前髪をかき上げおでこに触れた。
まだ感触が残っている。
とうとう私にも彼氏ができてしまった。……初彼氏。
うーん、やっぱり、あの人エロいよね……。
次はキスするのかな?やったことないからわからないけど……、どんな感じなんだろう?
目を閉じ有間さんの顔を想像する。真面目顔の周りにはキラキラ輝く光のエフェクト。
それで自分の指を唇に押し当ててみた。強く押したり、弱く押したり、指で叩いたり、唇をつねってみた。
うーん、……まぁ普通かな?ちゃんとできそうな気はする。
「はぁー」
今日のお金、全部出してもらって流石にお礼言いたいけど連絡できないのよね。
どうしたらいいんだろう。
店に来た時に言えばいいのかな?でも仕事中だとちゃんと会話できない。
「はぁー」
有間さん、今何してるんだろう……。
お風呂から出ると地元の友達からLINEが来てた。
麻莉【昨日言ってたナンパくんのやつ、行ったの?】
麻莉ちゃんは幼馴染で同じマンションに住んでいる。
昨日、お出掛けのことを相談しんだった。昨日はどうでも良さそうだったのに。
しお【行ったよ】
六花【やば!よく行ったねー凄いよ。で、どうだった?】
行ったらダメだったの?昨日は結果教えてって言ってたのに。
しお【酷いことされた】
麻莉【大丈夫?今から家行くよ!】
しお【嘘だから来なくていいよ】
麻莉【ちょっとぉーーーー!信じちゃったじゃん!ビビったし!しおってたまにエグい嘘つくよねw
で、どうだったの?てかほんとに大丈夫?】
しお【大丈夫だよ。なんか凄くいい人で付き合うことになった】
麻莉【それはそれで驚いた。ほんとだよね?あっ、てことはヤッたの?その人の写真見たいな】
麻莉ちゃんはちょっとビッチ。彼女の初体験は中2で今まで5人以上と付き合っている。経験人数は二桁越えで、大学に入ってからは更に伸びているらしい。
しお【やってないよ。写真撮ったけど恥ずかしいから今度見せる。あとね。キスはしてもらった】
まぁおでこにだけどね。
麻莉【おお、凄いじゃん!今度話し聞かせてよ。相談に乗るよ】
相談に乗ってくれるのか……なら、
しお【あのね。連絡先交換しなかったんだけどどう思う?だからその人と連絡でないんだよね】
麻莉ちゃんなら何かわかるかもしれない。
麻莉【うーん。その人ってしおが新品なの知ってるの?】
新品って処女のことだよね?てかなんで麻莉ちゃんが知ってるのよ。話したことないのに。
有間さんに男の人と付き合ったことない、みたいなことは言ったから想像付くと思うけど。
しお【たぶん、わかってると思う】
麻莉【じゃぁ彼女か奥さんいるんじゃないの?】
ええええええええ!?
そそそそそうなの!?
そんな風には見えなかったよ?
しお【なんでそうなるの?】
麻莉【まぁ私の妄想だけどね。連絡先を聞いてこなかった理由はあると思う】
理由?意味わからない。
んー、わからない。どんな理由なの?気になる。
私は麻莉ちゃんに電話を掛けた。
「もしもし、今電話大丈夫?」
「うん。大丈夫よ」
「聞かない理由ってなに?」
「うーん、しらない方がいいと思う?」
「気になって寝れない」
「まぁあくまでも仮説だからね。先ず、聞き忘れたっていうのはあり得ないと思うのよね。よっぽど無計画な人なら別だけど」
「社会人でしっかりした人だった」
「うんうん、でね。キスまでして聞き辛いってこともないから、敢えて聞かなかったって仮定するのが自然でしょ?」
「……うん」
確かにそうだよね。
「聞かない理由は何かってことなんだけど……、要するに関係を続けるの
急に気分が暗くなった。
でも、そんなことないでしょ。絶対にそんな感じの人じゃなかった。
麻莉ちゃんは有間さんと会ったことがないからわからんだよ。
「その人ともう会う機会ないの?」
「お店の常連だから……、お店……、来ると思う」
「声くらっ!あまり考え過ぎるのは良くないよね。ただ聞き忘れただけかもしれないし!ならその時に連絡先聞くしかないね」
「うん……、絶対聞く」
それから麻莉ちゃんと少し話した。でも結論は出なかった。
―――――――――
日曜日――。
お昼に起きて、夜までぼーっとしてた。もしかしたら有間さんが家に来るんじゃないか……とか、来るわけないのに妄想した。
昨日のデートで楽しかったことを思い出して笑ったり、やっぱり振られたのかもしれないと不安になっりもした。
夜、有間さんの家に行こうと思って家を出て、途中まで行ったけど引き返した。
家に行ったら絶対変な女って思われるし、もはやストーカーだし。
行って嫌な顔されたらとか、本物の彼女が家にいたらとか色々考えてしまい行けなかった。
月曜日――。
18:00から19:00の間に有間さんはよく店に来る。だからその時間になってかなりそわそわしてた。緊張したけど会いたいって思った。
でも、有間さんは来なかった。
火曜日――。
この日も有間さんは来なかった。
水曜日――。
今週は多めにシフト入れていて、この日もバイト。
でも、有間さんは来ない。
やっぱり、私は振られたんだ。
休憩室で一人ボーっとしていると、麻莉ちゃんの言葉を思い出した「男の言うことなんて5割は適当かウソだと思った方がいいよ」……。
私のこと褒めてたのって嘘?
付き合いたいって言ってくれたのも?
そう言えば、前に合コンで知り合った人は言っている事の9割は嘘だったと思う。
私が可愛くないからダメだったのかも?
それか性格がダメだった?私面倒くさいし性格悪いし……。
ほんとうは……、全部ウソで、彼女……いるのかな……。
急に悲しくなって、気付けば涙がポロポロ出てた。
「うっ、ずっ、ず、……えっく」
閉店は22時。それから片付けや掃除、売棚の補充をしてバイトが終わるのは23時くらいになる。
バイトが終わって店を出る。
これから有間さんの家に行ってみようかな。家にいるよね?でも……、もう遅いし、うーん、やっぱりダメ。とても行けない。
「はぁー」
さっき泣いて意気消沈していた私は自宅へ向い歩き出した。その時――。
「砂月さん!」
男の人の声――、振り返るとそこに有間さんが立っていた。
え? なんでいるの?
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