お昼休みの小議論

ユニオニア

6月1日 

「…わ、おきてー」

…ぁんだよ、もう少し寝かせてくれ…

「野沢、弁当食べちゃうよ」

その言葉を耳にして、俺は机から頭を素早く上げた

「何してくれとんじゃーっ!」

「おぉ、怖い怖い」

「全く…」

俺がため息をつくと、目の前でケラケラと吉野は笑った

「ほら、早く食べないとお昼休み終わっちゃうよ」

「あぁ、わかった」

そうして吉野は俺の分も広げてくれた

「それじゃ、いただきまーす」

「…うす」

吉野は、それはそれはカラフルな弁当を持ってきていた。さすがは女子だな…

「全く、今度から野菜増やしたら?」

「男子にはこれぐらいないといけないんですー」

「へぇ〜」

ニタニタ笑ってくるな、惨めになるだろ…

「なんなら、今度つくってこよっか?」

「は?」

「へっへー、冗談冗談」

「あのなぁ…」

手のひらでコロコロ踊らされて、早々に俺はツッコミを入れられなくなった

「そういえば、今日もまた寝てたよね。夜更かし?」

「あの先生の授業聞いてて眠くならないほうが不思議だよ」

「あはは、青木くんが前にいてよかったよねー」

「ほんとそれ」

青木とは、俺の席の前の男子である。異常に体が大きく、小柄な俺を隠すのにはピッタリってわけだ

「そのうち背中竹刀で叩かれるよ?」

「その時はその時よ」

「はぁ…」

吉野はがっくしと項垂れた。なに、俺はただ省エネに人生を送りたいだけだけだ

「そんなふうに生きてたらいつか痛い目を見ると思うな〜」

「ま、大丈夫だろ」

「ふーん…」冷ややかに視線を送ってきた。そして…

「ちょちょちょちょちょ、何してんの!?」

唐揚げを盗まれた。

「んー?らっへふぉふぁふぁふぉかふぁふぁふぇおいひいらん」

「口いっぱいでしゃべんなくていいから」

吉野はリスみたいに頬張っていた。全く…

「だって野沢の唐揚げ美味しいじゃん」

「ハイハイソーデスカ」

「むぅ、ひどい…」

「んー?どこが〜?」

ちょっと仕返しだ。気味がいいとかそういうものではないが

「どうしてそんなに美味しいの?」あー、箸でつつかないでくれ、頼む

「秘密だよ」

嘘だ。本当は冷食だ。

「教えてよ〜」「絶対教えない」

「むぅ…じゃあ、当ててみせる!」

「いいけれど、休み時間中に食べきれんのか?」

「え?」

キーンコーンカーンコーン

「あ、授業だ。さっさと準備するぞ」

「ああああああああ、食べきれなかったああああ」

「全くなぁ…」

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