あいたい

家猫のノラ

第1話 

茅秋ちあきは好きな人いるー?」


帰り道、一華いちか莉里愛りりあが恋バナを始める。


私はこの手の話題になるたび、必要以上に悩んでしまう。

好きなキャラや好きなタイプなら分かる。だけど『好きな人』は言葉がつまってしまう。


「私は…爽太そうたくんが好き。ちょっと恥ずぃ〜!!」


そう思い込ませる、自分に。口から出た音を脳に刻み込む『ワタシハソウタクンガスキ』。


「めっちゃライバルいるじゃん!!ガンバ〜w」


だから選んだ。モテモテな爽太くんなら嘘を本当にしてくれるかもしれないから。

恋に酔えるかもしれないから。


「頑張るーw」


頑張って、頑張って、自己暗示を重ねたよ。この感情を育てたよ。翻弄される乙女を演じたよ。

だけど結局私は外から自分がどう見られているのかを気にしていた。

恋をしている私を見てほしかった。



「茅秋〜爽太くん後輩に取られちゃったよぉ。ムカつかないのぉ?」


梨里愛が衝撃のスクープと言わんばかりの勢いで話してくる。いや、実際衝撃のスクープなんだろう。


『ワタシハソウタクンガスキ』なのだから。


恋と友情の違いが分からないなんて言えば可愛いかもしれないけど、私は誰にでもドキドキするし、誰であってもも一定以上の執着心が湧かない。

こんな都合のいい冷たい人間がいていいのだろうか。


「うぇーマジぃ…ショックだわ〜」


私は浜辺はまべ茅秋ちあき、中学3年生。

絶賛失恋中らしい。

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