第47話 嫌な所ほどよく似てる

第47話


ユンside


「リン………殴らせろ…………」

「物騒な寝言ですね………」


「会いたいな、リン………」と、そう呟いて父上様は眠ってしまった。


お酒のせいなのか、疲れていたのか………


恐らく、後者の方でしょうね………


ここ最近は心労が続く事が私を含めて多かったでしょうし………


「私も会いたいですよ、父上様。」


私達親子3人で、並んで食事を共にしたかった。


何処かに遊びにも行きたかったし、川の字というのにも憧れた。


世界の壁、世界における時間の流れとは本当に残酷だ。


私達は最後の最後まで、それらに振り回され続けたのだから………


「最近はちゃんと安定して同じ時間軸に合わせられる様になって、二度とこんな悲劇が起きない様になったのは皮肉ですよね………」


早く、早くこの域にまで辿り着きたかった。


辿り着いてさえいれば、こんな事には………


「ごめん………」

「────誰に謝っているのでしょうね、父上様は?」



────たった一時で私は確信した。


この人は想像以上に自罰的で、自分を痛め付ける事に躊躇が無い。


ミリスお姉様やリギルお姉様、私を含めた子供達への責任は、本来なら(義)母上様達にある筈なのに………


どうして、それさえも背負おうとしているのですか?


「もっと、父上様の事を知っていかないとですね。」


父上様曰く、無知も無自覚も罪らしいですから………


母上様が言っていた、『知らないという罪と知りすぎる罠』と同じ物なのでしょう。


まぁ、後半の『知りすぎる罠』に関しては、最後までよく理解わかりませんでしたけど………


「じゃあ、先ずはこの千載一遇を楽しむとしましょうか………」


父上様を抱き上げ、ベットへと運ぶ。


そして、その隣に寄り添う様に私も寝転ぶ。


おお、硬い………母上様と違ってゴツゴツしてる。


知識として知ってはいても、直に味わうのとじゃ、やっぱり違うわね………


「おやすみなさい、父上様………」


☆☆☆☆☆


「うぅ、重い………」


────誰か乗ってる?


アリスか?ミリスちゃんか?


いや、今日は確か………


「ムニャムニャ、やめて父上様!そこは入れちゃ駄目な場所です………」

「────ユンか。」


何の夢を見てるか知らんが、凄い風評被害が出てそうな夢を見てるな、コイツ?


ていうか、何で俺の上に乗ってるんだ、コイツ?


寝ぼけて俺の上に乗ってくるのは、アリス母娘だけで充分なんだよな………


ったく………


「起きろ、バカ娘。」

「きゃっ、痛い!」


よし、起きたな。


起きたなら、さっさと退いてくれ………


「うわぁ………」

「ん?どうした、ユン?」


何なんだ、急に紅く頬を染めて………


それに何処を見て………


「父上様、私でこんなに大きくしちゃったんですね!せ、責任を取って私が鎮めてあげますね!」


────成る程、そういう事か。


全く、このバカ娘め………


不死鳥の一突きフェニックス・スピア。」

「きゃん!?」

「コレは生理現象だ。何をバカな事言ってるんだ、お前?」


勝手に俺を鬼父みたいにしようとするんじゃねぇよ………


「ひ、酷いですよ父上様!いきなり殴るなんて!DV!!DVですよ、コレ!!!」

「コレ位なら効かないだろ。それにコレは躾だ。」

「言い草がDV常習犯じゃないですか、父上様!!」


朝っぱらから変な事を言うお前が悪いんだろうが………


それに、お前相手にDVする気なら、俺は身体強化魔法も使ってやるよ。


「うう、もう怒りましたからね!」

「はぁ、悪かった。悪かったから、機嫌を直してくれユン。」

「凄い心の籠もってない謝罪と土下座!?コレが母上様がよく父上様にやられてたと言っていた奴ですね………」

「言っとくが、そこら辺に関してはリンも大概だからな?」


めっちゃあざといポーズ決めて、可愛い感じに謝ってたからな、アイツ………


ババアがやってると思うとめっちゃキツい上に、自分で「テヘッ♡」とか言ってたのはマジで引いたよ、うん………


「むぅ、父上様!謝罪の気持ちがあるなら、私の言う事を聞いてくれますか?」

「お、おう………何でも聞くぞ?」

「ふふ、ふふふふ………」


何か急に笑い始めたけど、大丈夫か?


そういや、リンもこんな感じで急に笑い始める事があったな………


確か、そういう時は大体………


「今、って言いましたよね?」

「────くっ、やらかした。」


そういう時は大体、俺を嵌めた時なのを、今になって思い出してしまった。


くそ、似なくて良い所まで似やがって!!


「………で、何をすれば良いんだ?」

「それはですね………」


☆☆☆☆☆


「「「「失礼します、社長。」」」」


はぁ、遂に来てしまったか………


頼みを聞くと言った手前、断れないけど断りたかった。


正直、小雪に告白した時の次レベルに緊張している。


「あれ、このお方は誰ですか?」

「新しい取引相手の人でしょうか………」

「でも、何処かで………」

「あれ、もしかして………」


これが鏡花水月のメンバーか………


月ちゃんしか知らないけど、皆美人さんばかりだな………


でも、これからの事を思うと、胃が目茶苦茶痛い


「実はこの人の事を紹介したくて、皆を呼びました。この方は浦島 進。私の父上様で、今ネットで変な仮面の奴やダンジョンの門番として騒がられてる張本人ですね♪」

「ど、どうも………」


続く

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