第30話 死闘を終えて………からの爆弾発言

第30話  


『う、恨めしや───呪ってやるぞ、人間共が────』


俺の蹴りがメガキマイラの身体を貫き、奴は恨み言を吐きながら消滅していく。


最後の最後まで、くだらない野郎だったな、アイツ………


「はぁ、疲れた………」

「久し振りの運動は身体に堪えた………」


確かになぁ………


俺も気が付けば三十路になってたし、その頃ら辺から身体がちょっとな………


そういう時は深層の下の奴等と運動して解消してはいるが、時間が経てばそれも無理になるのだろうか?


「………おお、転移陣が出たな。」

「これで上へ戻れる。」


深層の最下層に居る奴を倒すと、最初の上層まで戻してくれる転移陣が発生する。


これを利用しないパターンだと、頑張って1から上へと戻らなければいけないので、この転移陣は凄く便利なのである。


「少し休憩してから帰るか、アリス?」

「うん、それに賛成。」


そう言って、地面へと座り込む俺達。


ちょっと凸凹してるが、異世界に居た時に皆で火山地帯で野宿した時よりはマシだ。


あの時、マジで熱くて寝苦しかったな………


「何か食べるか?俺のアイテムボックス、深層のモンスターで作った干し肉か、俺が今日飲もうとしてた酒しか入ってないけど。」


後、一応食べ物以外も入ってはいるのだが、適当に作ってみた試作品しか入っていない。


「食べる。お酒もちょうだい。」

「えっ⁉いや、お前はもう成人してるんだもんな。ちゃんとお酒を飲める歳になったって事だよな………」

「うん、やっと浦島様と一緒に飲める。」

「そうだな、やっと一緒に飲める。」


異世界では15歳から成人で、酒と煙草などが解放される(国によっては軽い麻薬大麻とかも解放されてた)のだが、俺は郷に入れば郷に従え理論で酒もいっぱい飲んでたし、煙草もめっちゃ吸っていた。


まぁ、そういうのが無いとやっていけない位には辛かったてのもあるのだが………


そんな訳で、1人だけ成人してないアリスには仲間外れにさせてしまう機会が多かった。


彼女を絶対に酒の席に参加させない様に頑張ったし、絶対に彼女の前では煙草を吸わない様に努力していた。


「うん、美味しいね。これ、何のお酒?」

「新宿ダンジョンの深層で唯一存在する休憩スポットの第15階層で取れる酒だ。本人曰く、日本酒らしい。」


新宿の深層第15階層は、様々なご馳走や嗜好品が存在する天国の様な場所だ。


其処には煙草の原料になる木とか、酒の湖とか、絶対に近づかないが麻薬を無理矢理飲ませようとする鬼婆が住む谷、可愛らしいモンスター達の可愛らしいキャットファイトが見れるコロシアムが在ったりする。


で、この酒は酒の湖に住むレイクサーペントが身体の内部で作り出した特製品だ。


本人の気が向くままに作るので、毎回種類が違うので、色んなお酒が楽しめる奴だ。


「………勇者様、膝枕。」

「はぁ?嫌だよ、足が痺れるし………」

「膝枕!膝枕!!さっさと膝枕!!!」


煩っ!?


もう酔ったのか、お前!!??


「ふぅ、落ち着く………」

「こんなのでか?」

「うん♪」

「────そうか。なら、満足するまでやってやるよ。」


俺の膝の上で気持ち良さそうにしてる彼女を眺めながら、彼女の頭を撫でていく。


触れた一瞬はピクッとしていたが、直ぐに彼女は俺に身を委ねてきた。


懐かしいな、昔もよく頭を撫でてあげてたっけ?


確か、彼女を撫でる権利を巡って、裏で皆とよく喧嘩してたな………


「ん?あっ、忘れてた………」


彼女を撫でていると、近くに何か来た様な感覚がしたので振り向くと、ドローンが飛んでいた。


そういや、一応撮影してたな………


というか、よくあの戦いの中でも無事だったな、コイツ………


────────────────あれ?


「これ、現在進行形でこの姿配信されちゃってない!?」

「う〜ん、何かあった?」

「ほら、早く配信止めてくれよ、アリス!俺はコイツの使い方知らないんだからさ!!」


俺にとっちゃ今の文明の機器はワケワカメな物ばっかりなんだぞ!?


「えぇ、まだ寝てたい。」

「ワガママ言うなよ!!お前、多分有名人なんだろ!?その上人妻なのに、こんな光景を流して大丈夫なのか!!??」

「はぁ、大丈夫だよ。だって、私と勇者様だもん。」

「勇者様、大丈夫な理由が何一つ見当たらないんだけどなぁ!!」


え、俺が可笑しいの?


こんなに焦ってる俺が異常なの?


「俺とお前がこんな事をやってる光景をお前の旦那さんが見て何を思うか考えてるか?目先の快楽を優先すると、ロクな事が起きないんだぞ!?」


俺、ドロドロとした奴は異世界でもう懲り懲りなんですよ!?


何なら、俺が異世界転移する前も色々と修羅場ってたしな!


「それも大丈夫。」

「だから、何で!!??」

「だって、私の旦那さんはだもん。」

「───────────────はい?」


あれ、俺の耳は可笑しくなったのだろうか?


凄い不穏な言葉が聞こえた様な気がするぞ?


「まぁ、婚姻届は出せそうにないし、内縁の旦那さんになるのかな?」

「おい待て、待てよ、待ってくれ。」


何勝手に説明も無しに話を進めてるんだ?


さっきから情報量が多過ぎて、俺の頭はパンク寸前だぞ?


「上に戻ったら娘に会わせてあげるね。娘のミリスにね♪」


──────────────────へ?


続く

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