相手の首を絞め合う系の百合ジャンル短編集

底道つかさ

第1話 少女と少女

 まだ早くならない宵入り、寺社の絵馬掛けの前、少女と少女がいる。二人は絵馬に背を向けて並び、指を重ね手を繋いでいた。

「なんて書いた、白瀬しらせ

「一緒だと嬉しくて……残酷だね、波黒はぐろ

 少女が尋ね少女が答える。

 繋ぐふたりの手が別れを惜しみ強く握られた。そしてゆっくりと解かれていく。

 同時、二人は背合わせに歩き出し、一歩一歩離れていった。両の歩みが合計で十を開いた所で互いに振り返り向き合う。

 そして言の葉は紡がれる。

「始めよう私たちの――」

切縁せつえんの宴を」

 瞬間、繋がれていた右手と左手に闇が生まれ、剣の柄が出現する。

 引き抜く。

 愛しい相手を握っていた手には今や、命絶つ刃が握られた。

 少女と少女は瞳を合わる。

 刹那、踏み込んで前へと加速した。

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