閑話37 IF もし、ディゼルが女の子だったら……6
ど、どうも……私の名前はセレスと申します。何方に自己紹介してるかはツッコまないで下さい。
私は、聖王国第二王女アリア殿下の侍女を務めております。『聖王流破邪滅殺天地無双地獄極楽昇天覇王拳』という、名前が長い上によく分からない武術を体得している以外は割と普通だった姫様の御様子がここ最近おかしな事になっております。
その理由は、姫様の護衛騎士になったディアナ・アークライト殿。聖王国の騎士の名家と名高いアークライト家出身で、天の力を宿す選ばれし者。
湖で水浴びをされていた姫様に深淵の軍勢が襲い掛かった時、ディアナ殿は姫様を救って下さいました……姫様なら襲ってきた怪物を拳の一撃で葬る事も可能だったのでしょうが。
それ以来、姫様はディアナ殿にべったり張り付いています――ディアナ殿が困惑しているのは言うまでもありません。姫様曰く、運命の相手だそうです。
まぁ、それはさておき……今、私は姫様の御部屋の掃除に訪れているのですが、大変困惑しております。何故なら、姫様の御部屋の内装に色んな意味で圧倒されているからです。
部屋中にディアナ殿のポスターが張られ、ベッドの上にはディアナ殿を模した抱き枕やぬいぐるみが置かれています。本棚には『お姉様アルバム』と書かれたアルバムが数十冊ほど納められています……中身を確認する勇気が私にはありません(;´・ω・)。
「ハァ……姫様の暴走振りにも困ったものですね。あら、あれは――?」
ふと、ベッドの上にある物が私の目に入ります。それはショーツ、女性用の下着でした。
何で、姫様のベッドの上にショーツがあるのでしょうか。というか、明らかに姫様がお召しになられる物ではありません。
「このショーツ、一体誰の――」
そこまで思考して、私の頬からは汗が伝いました。部屋中に飾られているディアナ殿のグッズの数々からして、このショーツが誰の物であるかを察してしまいました。
数歩、後退る私。それと、ほぼ同時に扉が開く音と共に姫様が入って来られました。
「セレス、御部屋のお掃除御苦労様で――」
姫様は最後まで言葉を紡ぐ事が出来ませんでした。ベッドの上のショーツを見るなり、全力ダッシュで駆け寄ってショーツを懐にしまい込みました。
「姫様」
「な、何ですか?」
「そのショーツ、ディアナ殿の物ですよね?」
「な、何を言っているんですか? 違いますよ」
明後日の方向を見る姫様。明らかに動揺している。
私は深呼吸した後、姫様に告げる。
「だったら、ディアナ殿に確認してもらいましょう」
「やめて、これは私の一番の宝物なの! お姉様グッズの中で至高の逸品なんです!!」
「やっぱり、ディアナ殿の物ではありませんか! 何で、ディアナ殿のショーツが姫様の御部屋にあるのですかっ!?」
「お姉様の御実家に忍び込んで、お姉様の御部屋のタンスから入手しました」
「一国の王女殿下が泥棒の真似事をなさらないで下さいっ!」
というか、何時の間に聖王宮の外に外出したっていうの!? ディアナ殿グッズ集めの為なら労力を惜しまない姫様。
その労力と気概を、もっと別の方向に活かして下さいよ……(´;ω;`)。
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