闇夜の星

星野奏

闇夜の星

深く、深く。

感情を押し殺すんだ。

何もかも考えなければ、傷つかずに生きていける。

そう。

誰ともかかわらないでいることが僕にとっての幸せだ。

今までそう思ってた。

でも、君は輝いて見えた。

過去を気にせず今を精一杯生きる姿がとても眩しくて、妬ましかった。



過去を引きずった僕は、自暴自棄の様に周りを遮断し一匹狼を演じて見せていた。

でも、そんなのが何か月も続くはずは無かった。

どうしても周りとコミュニケーションをとらざるを得ない状況に押し込められ、次第に何となく丸くなっていく自分を感じた。

心の中には影を背負ったまま。

君とはそんな時初めて話した。

文化祭の出し物を決める時だったはずだ。

その時ちょっとだけど女子と話せたことに僕は浮かれていた。

次第に君とは話す機会が増えた。

少しして鈍感な僕の心は気付いたんだ。

僕は君のことが好きだと。

ガチガチに緊張して掛けてみた通話、時間帯が遅くても笑って出てくれた君は僕の中で女神のようだった。

毎日のように話した。

学校じゃ話すのがちょっと気まずいからなんて、学校でもずっとメッセージでやり取りをした。

ただ楽しかった。

君のおかげで暗い気持ちで入った高校も薔薇色気分だった。



少し早すぎる告白もあった。

言うまでもなく玉砕した。

でも、想うことをやめなかった。

正しく言うには辞められなかったんだ。

だって、君に依存してしまっていたから。

君が優しくしてくれたから、君が優しく撫でてくれたから。

君が「もう大丈夫」なんて言ったから。

君が「一人で辛かったよね」なんて僕なんかに寄り添ってくれたから。

やがて僕は気づいてしまった。

僕は君のことを好きになったんじゃない、と。

足りない頭で考えた。

きっと僕は僕の過去を優しく受け止めて、大丈夫と言ってくれた君を只の依存先として好きになったんだ。

どうしても心配してほしかった、目の前で体調が悪い振りもしてみた。

体調が悪いと噓をついて学校をサボってみた。

君からは絶えず変わらない調子でメッセージが届く。

僕はそれに心底安心したんだ。

毎日のように話しても、優しく話しかけてくれるその優しさに甘えすぎていたんだ。

それから僕は君を憧れとしてみるようになった。

僕なんかのちっぽけな闇以上を背負っても毎日笑っている君を。

周りから名前を呼ばれ慕われている君を。

僕は君みたいには絶対になれない。

なれるはずがない。

でも、僕は君を助けられるようになりたかった。



でも望むだけ無駄だった。

所詮僕さ。

そう、いっつもこの自前の病み感情で全部無に帰すんだ。

そう。全部僕のせい。

やっぱり僕は名前負けしている。

誰かを「喜ばせるなんてできない」

でも、君はすごいよ。

こんな奴にまで手を差し伸べたんだ。

名前に負けない「空のような大きな愛」をくれた。


あの時君はどう思ったんだろう。

今君はどう思ってるんだろう。

結局対面で話すのが怖くて、逃げてメッセージさえ送るのを辞めた。


今でも君は僕の憧れだ。

闇夜に輝く一等星の様に。

ただ、その輝きが僕に圧倒的に足りない全てが妬ましかった。

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闇夜の星 星野奏 @star_kanade

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