老婆、時計、中年男性

田舎の村に住む老婆が窓から外を眺めていた。突然、村の中心にある大きな時計が轟音とともに崩れ落ちた。老婆は驚きのあまりひっくり返り、そのまま後ろに20メートルほど転がった。


崩れた時計の破片が街中に飛び散り、大半の住民が死んだ。時計があった場所には理不尽な中年男性が立っていた。彼は時計の崩壊を予見していたかのように、またそれが自身の願いであったかのように微笑んでいた。


生き残った老婆は中年男性に近づき、尋ねた。「なぜ時計を壊したのか。」


中年男性は不可解な表情を浮かべながら答えた。「壊したのは私ではない。壊したのは私だ。」


今度は老婆が一瞬不可解な表情を浮かべた。しかし、少しすると老婆は何かを悟ったように、そして希望に心躍らす少女のように、確信に満ちた表情でその場合を去った。


老婆は村を去り、時計は消え、中年男性は佇んでいた。(終)

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