彼にとっての一日。
美少女たちの会話とは裏腹に魁比呂。
彼は風紀委員の一員。
風紀委員会が活動したり、会議したり、集合したりする部屋――応接室。
基本、生徒として学校の企画運営は生徒会だが、風紀委員会は学校の風紀を守ることを大前提に考えてる委員会。
規律を重んじ、違反する生徒を取り締まるのが風紀委員会だ。
比呂は風紀委員会の一員だが、基本、彼は教室で授業を受けることなく、一人、校舎の屋上で昼寝をしている。
「う~ん。ふぁ~」
気持ちよさそうに寝息を立ててた比呂だが、陽光の暖かさも暑さに変わり始めたタイミングで目を覚ました。
「あぁ~、暑くなったな」
ゴキゴキと首を鳴らした後、立ち上がる比呂。彼が起きたタイミングで屋上に通じるドアが開く。
「あっ、
「押忍。今日も四葉学園に異常はありません!」
高校の制服を着た二人の男子生徒。
一人は色白で、髪は銀色でアイビー色の後ろ髪を束ねてる少年。
もう一人は褐色肌に紺色の髪のボブカットで、前髪の一部を触覚のように玉飾りで留め、先端を白に染めてる少年。
二人の少年が比呂に声を投げる。声を投げるといっても、いつもの定時報告だ。
「うん。ご苦労様。最近、うちの女子生徒がナンパに遭ってる、っていう話もある。
下校時間の際も頼むぞ」
「はい!」
「お任せください!」
「じゃあ、時間もほどほどに授業には
と、比呂は二人に声かけをした後、屋上をあとにする。
残った二人――白鉄龍樹に、黒鉄秀二は「ハァ~」と溜息を漏らす。
「全く、委員長はいつものようにマイペースだね」
「なにより怖ぇからな」
「でも、それが彼の持ち味なんだけど……」
「怒らせないようにするのが大変だ」
いつもいつも、比呂を不機嫌にさせないことに神経を使わされる。
魁比呂。
風紀委員会、委員長を務めてる。基本、四葉学園の風紀を重んじ、登校しているが実際のところ、授業には出席していない。
では、頭が悪いのか、成績は大丈夫なのかと言われれば、問題ないと言えば、問題ない。
必要最低限の単位は修得してる。成績も上位と、頭が良かった。
だが、クラスの仲は悪い。でも、比呂はそのことを気にしていない。
むしろ、悪目立ちしてる方が自分にとって楽だということを理解してる。比呂はマイペースで自分から一人になることを選んだ。
端から見れば、頑固者とか言われるかもしれないが、裏を返せば、芯がしっかりと持ってるという長所になる。
周りの意見に左右されない芯の強さがあるし。あんまり自分のことを話さない。
恋愛とか家族関係とか生い立ちとか性格とかいろいろと自分の口から明かさない。謎の満ち溢れてるのに、クールだからこそ、かっこよさが見出されていた。
なので、密かに比呂へのファンクラブがいるとかいないとか。
平日の午前中。クラスの大半が授業を受けている中、比呂はただ一人、応接室に入り、カキカキと溜まってる書類に目を通したり、印鑑を押したりと業務に集中することにした。
キーンコーンカーンコーン
と、書類作業をしてたら、授業が終わる予鈴が鳴った。
「ん?」
ここで比呂は壁に掛けられた時計を見る。時計の針は既に十二を過ぎていた。
「おや、もうお昼か」
今頃になってお昼時だと気づいたようだ。
「さて、俺もお昼としよう」
彼は席を立ち、ソファーに掛けておいた鞄からお弁当を取り出す。昼は基本、一人で食べるのが基本。
友人とかクラスとメイトとかと食べるなんてことはしない。それと学生食堂での昼食も比呂は取らない。
基本、屋上か応接室での昼食が基本だ。
なぜか、って? 簡単だ。
一人で黙々と食べるのが魁比呂の信条だからだ。
「さて、午後は――」
(午後は残ってる書類を片付けたら、校内の見回りだったな。
いや、今日は放課後に委員長会議だったな)
「ふぁ~、群れるようなことをしないでもらいたいものだね」
比呂は常々思うのだった。
(弱い奴が群れるのはよく分かるが、自分の前では群れないでほしいものだ)
彼はお昼の弁当を食べながら思うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます