我の強すぎる一匹狼に華の少女は恋をしちゃった。

柊銀華

第一章

プロローグ

 一匹狼。

 その語源は動物の狼は子供の間だけ親元で過ごすが、新しいパートナーを見つけたときや群れの秩序が乱れたときには群れから出て行くこと。

 群れから出る狼のことを『一匹狼』と呼ばれ、由来は他者をあまり頼らず、単独行動を好む人を指し示すのが生物界の特徴。


 アメリカやイギリス、中国などの海外では目立つこともないが、同調圧力が多い日本においては一際目立ってしまう。


 羨望を向けられるも、集団での行動が多い場所だと、他者から嫌われる恐れがあることもしばしばある。


 世の中では、一匹狼と独りぼっちと同じなのでは? という声もあるが、実際は違い――。

 一匹狼の人は

 独りぼっちの人はのことを指す。


 そして、その一匹狼の人――魁比呂。

 彼は自らの意志で集団に馴染まず、学校生活を満喫してる高校生の一人だ。




 今日は快晴。

 雲一つない陽気な空。

 穏やかな風。

 まさに、昼寝にもってこいな条件が揃っていた。


「うーん。静かなのが、より快適だな」


 学校の屋上で横になって昼寝に入ろうとする少年が一人いた。


 ふぁ~ッと欠伸を一つ吐いたら、そのまま横になって昼寝を敢行しようとしたとき――


「え~、そうなの~」

「……でさ――」

「ふーん。あっそ……」


 昼寝を邪魔しようとする声が聞こえてくる。


「…………」

(あぁ~、もう、うるさい。

 いったい、誰なんだよ。俺の昼寝の邪魔をするのは――)


 彼は不機嫌になった。苛立つ気持ちを押さえながら、ノソッと起き上がり、下を覗き見る。

 下に目をやれば、三人の女子生徒がフェンス近くで座り、仲良くワイワイと談笑というかお喋りをしていた。

 彼は三人の女子生徒の顔に見覚えがあった。


「…………」

(なんだ、あいつらか。相変わらず、人気者がこんな所で屯ってると有象無象が集まって群れるじゃないか。

 嫌だよ。群れてるだけしか能がない連中を見るのは――)


 彼から見れば、ただ理由もなく群れてる生徒たちが鬱陶しくて仕方なかった。

 しかも、だけでも、虫唾が走って敵わない。

 おまけに三人が三人。佳麗な美少女なために余計に目立っていた。


「えぇ~、クラスの皆、そんなことを言って――」

「そうそう……だからさぁ~――」

「うわぁ~、鬱陶しいったら、ありゃしない」


 何やら、嫌気混じりの話し声が聞こえる。

 少し距離が離れてるから聞き耳を立てても薄らとしか聞こえないが、わりかし、気持ちのいい話ではなかった。

 気持ちの悪い話をするには、容姿があっていない。


 一人は肩のラインで切りそろえられた黒髪は遠目から見てもサラサラであるし、肌も絹のように白く、黒い瞳は黒曜石を思わせるようだが、左のもみ上げに赤色のメッシュで染められてるところから素行が悪い印象を持たれてる。

 三人の中では『可憐さ』を保持してる。


 もう一人は、一人目と同じように肌の色は白いが、髪の色だけは違う。北欧人を思わせる白銀を思わせる銀髪。蒼い瞳は大海のように見える碧眼。可愛らしい印象を与えてくれる。

 三人の中では『可愛さ』を保持してる。


 最後の一人は肩のラインで切りそろえられた藍色の髪はサラサラで、肌は若干、薄い肌色。髪の色と同じ、藍色の瞳は宝石のようで、高貴さを伺わせる美少女。

 三人の中では『美しさ』を保持してる。


 彼女たちの容姿のどこに問題点があるのか彼には分からなかった。しかし、彼女たちにはもっぱらの噂があった。

 パパ活してるだとか、素行が悪さから薬でも決め込んでるのだとか、見た目とは裏腹にヤンキーを決め込んでるじゃないのかだとか、いろいろとあった。

 当然、その噂は彼の耳にも届いてる。


(素行の悪さは知らないが、あんまり気持ちの悪い話をされると俺の気分を損ねる。

 ここは大人しく帰るのを待つとしよう)


 彼は居眠りを決め込もうとしたとき――、次の話に意識をそちらに向けてしまう。


「それにしてもさ~、天川くん。ほんとに鬱陶しいよね」

「ほんと、如何にも俺様系って奴? 気持ち悪いんだよねぇ~」

「自分の否すら認めないし。自分に逆らう奴は言葉だろうとなんだろうと暴力振るうし。私たちのことをもの扱いしてるし。

 萎えるぅ~」


 不機嫌さを前面に出していた。話に出る男子の名前はクラスメイトの天川光。

 超絶イケメン。勉強もスポーツもできる完璧超人。だけど、究極の自己中心的で、世の中に悪なんてないと豪語する性善説の塊ともいえる男子生徒。

 女子生徒から人気を得てるが、自分に逆らう奴はどんな手を使ってでも、痛めつけるという曰く付きの生徒。


「おまけであいつの周りって、下卑た奴らが多い」

「気持ち悪くて、こっちが吐き気する」

「そう言われると、うちの男子って、素行というか性格がいい奴なんて少ないんじゃない?」


 なんやかんや男子生徒への悪口が多かった。見た目は超絶美少女なのに、性格が悪そうに見えるが、彼女たちも人気者なのは盗み聞いてる彼も知ってる。

 盗み聞いてるからこそ、余計に寝ようにも寝られなかった。


(早く、静かにならないかなぁ~)


 なけなしの思いを吐露するのだった。




 彼が通ってる高校は文武両道の進学校だが、ヤンキーとか不良がそれなりにいる学校。

 四葉学園高校。

 勉学の成績はそこそこだけど、部活動に力を入れてる学校として有名だが、裏ではいろいろと噂が絶えない高校として有名な学校だ。


 その高校の風紀委員をしてる彼――魁比呂。

 一匹狼で、一人でいることを好む少年が三人のうち、一人の超絶美少女からグイグイと興味を向けられてしまう毎日を送る物語の始まり、始まり――。

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