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才能ってなんだと思う？

小さい頃から目立つのは嫌いじゃなかった

周りの人が「すごいね」って建前みたいな本心を言ってくれるから。

　でも、そう思ってても、たまに思うんだ。この人は僕よりもあれができる。あんな経験をしたことがある。もし、この人には絶対に勝てると思ってても、僕の知らないことを知っている。それだけでその人のほうが上だ。自分が完全に勝てる相手なんていない。きっと赤ん坊だってその乏しい感覚の中できっと僕よりも頑張って生きている、家族でさえ僕よりも長く生きて経験をたくさん積んできていて、年下の弟でさえも、僕にはできなかった友達と一緒に今日も学校から帰ったらボールを持って不自由な野原を駆けていくんだろう。

　「それは個性よ。あなたはそれでいいの」そんな優しい言葉をかけてもらっても。

　こんなに心のなかで人と比べている自分のどこが個性なんだ？

「誰にでも個性があるものよ。目立つことが平気なのが誰にでもできたことじゃないわ。」

いや、それは違う。人に見られることが好きなのはその人より上かもって思いたいだけ。いや、きっとそれも建前だ。他の人へ、わかりやすい自己顕示をしたいだけ。自分は騙せなかった低い自尊心を他の人には隠したかっただけ。だからきっと容姿も頑張って他の人よりも良くなるように、勉強を頑張ってあの人よりもいい点数が取れるように。スポーツは苦手だったけど何か一つくらい弱点があったほうが魅力的ってよく読んでない文字列から聞いたから誤魔化して苦手なままに。この機会だから本当のことを言うと、それも弟に勝てないとかそう思ってたからなんだろう。多分、

「…そっか、そうだよね。変なこと聞いちゃったね」

まあでも。そんな自分の思いを知られないように生きていくことはできる。それだけが僕が僕でいさせてくれて、何も難しいことを考えていなさそうなあなたの隣にいてもいいと思わせてくれる。いつ崩れてしまうのかもわからないけど、そんな確信を持っておこうと思う。