モールを出て、彩に会おう。彩は今交通事故で入院している。僕が見舞いに行かないでどうする?


 僕らのショッピングスポットとはいえ、このモールでいつまでも閉じ込められているわけにはいかない。


 まずはまさくんを探しに行こう。まさくんは死ななかった。もう一人の僕がどう行動するのかも気になる。はじめのループでは僕はまさくんを守れず、殺人鬼がこのモールにいることをもっちーとマリー・ガガに伝える。ドーナツショップ『ミスター・ダビデ』で。


 亡くなったあの二人ももしかしたらまた生きて現れていないだろうか? 二人と再会を果たせた一階ドーナツショップを覗いてみるか。


 東A立体駐車場の三階からモールに戻り、北東エスカレーターで一階へ向かう。


 おい、嘘だろ。


 少しは予期していたし、可能性で言えばほぼ確実だと頭では分かっていた。それでも、生きているもっちーとマリー・ガガを『ミスター・ダビデ』で発見してしまうと、血も凍りそうになった。


 さっきと状況がまるで違う。僕がまさくんを仮面の不審者から守ったことで、四人仲良く座っていた。


 もっちーとマリー・ガガは当然隣に座り、もっちーの向かいにまさくん、マリー・ガガの向かいにもう一人の僕が席についてドーナツを食べていた。今回ももっちーとマリー・ガガの趣向は同じようで、シュガードーナツを仲良く食している。一方、もう一人の僕とまさくんはドーナツどころかドリンクにも手をつけていない。まさくんは手帳ほどのサイズの紙になにやら絵を描いている。もう一人の僕が描き上げられた絵を褒めていた。


「まさくんは顔を描くのが上手いな」


 もう一人の僕が言うと、まさくんは自信満々に頷く。


「僕は魚を描いてみるよ」


 もう一人の僕が魚をさらっと描くと、まさくんは首を振る。魚が嫌いだと駄々をこねるように唇を尖らせる。


 なんだよ。みんな仲良くして。僕一人だけ蚊帳の外だ。かといって見つかったら彼らを混乱させてしまうだろうから、今は無益なトラブルは回避したいので『ミスター・ダビデ』の隣のカフェに身を潜める。


 それにしても驚いたのは、もう一人の僕は同じ僕なのに傍から見れば社交的に見えたことだ。隣の芝は青く見えるということかもしれないが、あまりにも子供らと馴染んでいる。


「まさくんは絵が好きなんだね。でも、魚は嫌いなんだ? 食べられないの?」ともう一人の僕がまさくんに尋ねる。


「うん。魚って気持ち悪いんだ。鱗とか、死んだ目とか」


「心配しなくても、いつかは食べられるようになるよ」


 まさくんは、もう一人の僕の顔をじっとめつける。


「どうして変なお面をつけて隠れてたの?」


 もう一人の僕は首を傾げている。


 まさくんは僕と仮面の不審者がエスカレーターの前で追走劇を繰り広げて、もみ合ったところを見たのかもしれない。それをもう一人の僕に聞いたのか?


「誰の話をしてるんだ? 僕ら以外にこのモールには人がいないんだよ」


 もっちーがドーナツで口をハムスターのように膨らませながら、もごもご言う。


「むぐむぐ。まさくんは、本当に見たことしか話さへんで。嘘は嫌いやもんな?」


 まさくんは頷いているが、もう一人の僕はしっくりこない様子だ。


「見たって。どこで見たんだ」


 まさくんは俯いてしまう。もっちーが沈黙を破るように話題を投げる。


「バレンタイン会場が荒らされてるのはなんなんやろ」


「僕ら以外に誰かいるって言うのか?」


「まさくんが嘘つくような子に見えるんか?」


 マリー・ガガももう一人の僕を口撃するために加勢に入る。


「八歳の男の子が、どうして大人のウダガワさんを騙さないといけないの?」


「別に騙されたわけじゃないし」


 話は平行線をたどっている。


「どうして包丁持ってたの?」


 まさくんの一言に場が凍りついた。


「包丁だって? 誰が? まさか僕が? 見間違いだろ? スマホしか持ってないんだよ」


「まぁ、さすがにまさくん、見間違いじゃなくて?」


 マリー・ガガが口元を手で覆う。


「本当だよ。銀色に光ってたもん」


 まさくんの言葉に圧倒された女子二人組が、冷ややかな視線をもう一人の僕に投げる。もう一人の僕は冷静に鼻でせせら笑う。それから合点がいったとばかりに膝を打つ。


「探偵ごっこがしたい、そうだろ? 違うのか」


 女子二人組はあきれ顔をする。


「考えてみろよ。包丁を持った不審者がうろついてるなら、そいつは包丁をどこから持ってきたんだ」


「ロフト」


 即座にもっちーが答えたので、もう一人の僕は苦笑する。僕も同じ顔をしてしまったかもしれない。生き返っても、もっちーはもっちーだ。


「不審者がいるとして、そいつはまさくんを狙ったのか? そんなの誰が分かる?」


 誰も答えない。さすがのもっちーもマリー・ガガと顔を見合わせる。


「もしかしてうちが狙われてた?」


「もっちーは大丈夫よ。わたしがもし誰かに狙われたら、父が三百万ぐらい平気で払ってしまいそうで怖いわ」


「ないない。マリー・ガガは不審者も口で言い負かしそうやし」


「そんなことないわ。わたし、すぐ誘拐されちゃうかも?」


「じゃあうちが守ったるわ」


「優しいもっちー!」


「マリア!」


 僕ともう一人の僕は何を見せられているのだろう。女子の友情だろうか。マリー・ガガの本名はマリアなのか。お嬢様としては、凡庸な名前だな。


 僕はふと、この後の行動について思案する。そもそもどうして自分だけこそこそ隠れて見守らなければならないのか。原因ははっきりしている。もう一人の僕が同じ空間に存在するからだ。


 自分と同じ顔の人間と遭遇したら死ぬとはよく言ったものだ。実際僕は自分の分身に戦いて、二の足を踏んでいる。


 嫌な予感がする。僕は仮面の不審者を倒したのに、何か重大なミスをしたような気がしている。ここまで僕を含めて四人の人間が一度は増殖していることになる。仮面の不審者が増えないと断言できないだろう。今こうして僕が息を潜めているように、仮面の不審者もまさくん、もっちー、マリー・ガガ、もう一人の僕を見張っているのではないだろうか?


 もう一人の僕が席を立つ。トイレに行くようだ。


「もっちーとマリー・ガガもトイレ行くか?」


 もう一人の僕が尋ねると二人はくすくす照れ笑いをする。


「気持ち悪いな」


「あんたもな。なんで男の人といっしょに行かなあかんのよ」


「いや、一緒に入るわけじゃないし」


 もう一人の僕は機嫌を悪くして、一人で去って行く。


 子供らに話しかけてみるか? この際、もう一人の僕は僕と同じだと信じるのならば、俊足の持ち主だろうし、自分の身は自分で守れる。慌てて危険を知らせる必要はない。


 僕が目を離したらいけないのは子供たちだ。


 もう一人の僕がトイレに向かった側から、僕はできるだけすっきりしたという顔を繕って子供たちに近づく。もっちーが早くも僕を見つける。


「なんや、トイレ見つからへんの?」


「い、いや」


 さっき三人が話していた僕と僕は同一人物と見なされたようだ。これなら打ち解けるのも簡単そうだ。


「あ。あのさ。仮面をかぶった人のことだけど、僕も見たよ」


 女子二人組は怪訝な顔をする。まさくんだけ僕の顔を凝視していた。


 じっと無表情で見つめられると冷や汗をかく。僕があいつを倒してやったんだと言いたくなるが、突き落としたことは黙っておく。


 まさくんはまた僕の顔が気になるのだろう。機先を制しておく。


「僕の顔カメレオンみたいってよく言われるんだ」


 ぎょっとしたまさくんが席を立った。


「どうした?」


 思っていたことを言い当てたんだから、驚くのは当たり前か。


 僕はふと、まさくんが描いた絵を見てしまった。誰が描かれているのか人目で分かった。何が「まさくんは顔を描くのが上手いな」だよ。まさくんの描いている絵は茶色で塗りつぶされた人間の顔だ。黄金のチョコレートマスクの黄金が表現できないから、茶色の色鉛筆で塗りつぶしている。ご丁寧に輪郭は黒で塗りつぶしている。フードを描くのが難しくて塗りつぶして表現している。これは、紛れもなく不審者だ。


 まさくんが立ち上がって、不審者の描かれたメモが床に落ちる。そこに同じメモがないことが救いか。


 驚いていたのは僕だけではない。幽霊でも見たようにゆっくりとまさくんは僕を指差す。


 僕は自分の身体をチェックする。しまった。もう一人の僕との決定的な違いは、ネイビーのダウンジャケットを着ていないことだ。仮面の不審者とやりあったときに脱ぎ捨て、今は薄茶色のニットのトップス姿だった。


 まさくんの厚ぼったい瞼から大きな目が見開かれ、無言で詰問してくる。


「暑いから脱いだんだよ。暖房効いてるし」


 女子二人組はダウンジャケットのことに、今気づいたようだ。余計な弁明はしない方がよかった。


 まさくんの方から僕に近づいてきて、僕の手を引く。どういう風の吹き回しだ。


「ぼくもトイレに行きたい。つれてってくれる?」


「あ、ああいいよ」


 バレンタインイベント会場の方へつれていかれる。


 人気がないことをまさくんは確認する。チョコの展示されたショーケースの後ろに座り込む。


「お兄さんも座ってよ」


 僕も座るとまさくんは声を潜める。


「どうしてとぼけるの?」


 聞かれた意味が分からない。


「なんのこと」


 まさくんは俯いて唇をぎゅっと噛む。


「カメレオン」


「ああ、そうだね」


「カメレオンは擬態するんだ!」


 まさくんの声は潜めているにも関わらず、怒気で大きく聞こえた。


「擬態って、色を変えることだけど何が言いたいのかな」


 木や葉の色に変色して天敵から身を守るのがカメレオンだが。


「悪いカメレオンなんだ」


 カメレオンに良いも悪いもあるのだろうか。


 まさくんは僕を振り払うようにして走り去った。


「まさくん!」


 女子二人組のいるドーナツショップに行けばいいものの、南西にある安価なアパレルショップに向かって走って行く。


 そのとき、トイレから出て来たもう一人の僕と鉢合わせた。嘘だろ。まずい。


 僕の顔を見て驚いている。当然の反応だ。僕も二度目とはいえ出会い頭に遭遇すると肝を潰した。何か言おうとして、声が出ない。向こうも、口を開けたり閉めたりして、僕と同じような反応をする。


 それでも、僕はまさくんを守らなければと思ってまさくんを追う。


 するとあろうことか、もう一人の僕がまさくんを抱き留めて走り去った。


「やめてよ。離してよ。ぼくは死にたくないよ!」


 泣きわめくまさくんを連れて、もう一人の僕は南西の通路を駆けていく。おそらく、僕に驚いたからだと思う。僕が手出しすればもう一人の僕は混乱するだけだろう。


 一番最初に襲われるまさくんの傍に、もう一人の僕がいてくれるのなら、今は安全とも言えるが。


 追いかけるのはやめて、もっちーとマリー・ガガの元へ戻ろう。


 二人はまだドーナツショップで呑気に話し込んでいる。


「でさ、先生の彼氏がブサイクやってん。先生もしかしてB専? ってうち聞いたんよ」


「B専ってどういう意味なの?」


「ブサイクのBや! 先生、恋愛では相手の気持ちを重視するんやって。あほやんなぁ。先生って。うちのお母さんより若いし、運動神経抜群やのに。もっとイケメン捕まえるチャンスあるはずやん」


「体育の先生だし、お相手も若くて運動できないと釣り合わないってことでしょう?」


 僕は割り込む。


「ここを移ろう。とりあえず屋上に行こう」


「あ、ウダガワや。トイレ長いからどうしたんやろう思ってたで。あれ、まさくんは?」


「まさくんは……たぶん上に行った。だからいっしょに行こう」


「見失ったんかいな」


「いやー」


 マリー・ガガも僕を責める。


「大人ならしっかりして下さい。今は誰もいないから誘拐されたりする心配はないけど、子供から目を離したら駄目でしょ。めっ」


 屋上のキッズプレイゾーンには当然まさくんはいない。見晴らしのいい場所だから女子二人を守るのなら安全だとは思う。


「まさくんおらんけどー」


「たぶん来るよ。まさくんのお母さんは屋上にいたんだから」


 嘘でも何でもいいから、もう一人の僕と鉢合わせない理由が必要だった。


「そうなん?」


「ほら、雷が落ちたときまさくんは走っただろ?」


「雷? いつの話?」


 知らないのか。


「どうやってここに来たんだ?」


「電車」


「そうじゃなくて。じゃあ、いつからこのモールにいる?」


「お昼十二時半に家出て、一時にここ着いて。マリー・ガガとフードコートでステーキ丼食べてん。だから、一時からやな」


 いいもの食いやがって。


 屋上では風が冷たいので、屋内のカフェに入った。これまで何度も入ったが店内の時計は相変わらず二時十分で止まっている。店内のアンビエントな音楽がだんだん嫌いになってくる。


 もっちーが急に僕の彼女のことについて問いただしてきた。


「ウダガワさ、そんな目つきやけど彼女おるんやろ? どんな人なん?」


 今頃つり目を馬鹿にしやがって。話の切り出し方がまるでなってない。


「わたしも聞いてみたいわ。B専ではないんでしょう? きっと素敵な女性を探しているんじゃないかしら。お兄さんを引っ張ってくれるタイプの人を探してるんじゃない?」


 マリー・ガガまで恋バナをご所望か。


「彼女とはまだつき合って七か月なんだ」


 そのとき、脳裏に彩の怒鳴った声が響いた。




『子供なんていらないに決まってるでしょ!』

 



 今のはなんだろう。僕は彩とは順風満帆にやってきたつもりだ。


 もっちーより、マリー・ガガの方は真剣に話を聞きたいと身を乗り出す。


「本当に彼女さんがいるの?」


 僕らはセルフでカフェのドリンクを好き勝手混ぜて飲む。もっちーは、カフェオレと抹茶を混ぜて遊ぶことに夢中だ。自分から話を振ったくせに。


「彼女は、まぁ。僕より年上でほとんど大人かな。二十歳過ぎてるし」


「ええやん。大人の女性って、胸大きいんやろ」


 にやつくもっちー。


「いや。胸で選んだとかじゃないんだけど」


「やっぱ胸大きいんや」


 小学生ってこんなにウザかったか? まるで男の子だな。


「どのような方なの? 職業は? 思うんだけど、お兄さんはあまりお金持ちじゃないでしょ? 彼女さんのヒモなの?」


 僕はもう少しでアイスコーヒーを噴き出すところだった。ヒモとはなんだ。僕はしっかりスーパーのレジ打ちのバイトをしている。


「からかうのもほどほどにしろよ。僕は彩にそんなことされてない」


 早口に、また余計なことを言ってしまった。


「アヤっていうん? ウダガワの彼女? アヤちゃんやってー!」


 彩の名前はこの際、目を瞑る。『されてない』なんて言い方、まるでされてるみたいじゃないか。……、僕はヒモなのか。いや、もしかしたらそれよりももっと酷い。隷属的に彩のことを愛慕しているとはいえ、何か大きな間違いはなかっただろうか?


 彩はときどき苛烈に僕を罵る。そういうときはだいたい彩のアパートでだ。外出先での彩は笑顔を絶やさない。




『して……もっと……そうよ。まったくなってないわ。下手すぎ、のろま。もっとこうっ』




 もう少しで彩の喘ぎ声が聞こえそうだった。僕はアイスコーヒーを飲み干す。


「初デートどこやったん? ウダガワのことやから、予算ないやろうし生駒山のとこちゃうん?」


「あそこの遊園地はシンプルで楽しいと思うけどな」


「あ、当たったんか?」


「違うよ。USJだ」


 こほんとマリー・ガガが咳払いする。


「まぁ、それはそれで予想範囲内ね」


 そうか、そんなもんか。


「うち、ディズニーがええわ」


「わたしも。海外もいいわよ。フロリダのディズニーはパークが六つもあるの。とても一日じゃ回り切れないの。美女と野獣よね。日本のとは違って本物のベルに会えるの」


 二人が話し込むので、いい加減疲れてきた。大人を無碍に扱って自分たちだけで盛り上がるなんて、どういう神経をしているのだろう。子供の神経は大人のそれより図太いらしい。


「デートで遊園地って、ベタすぎるやん」


 さっきはディズニーの話で盛り上がっていたくせに批判するのか。ディズニーも遊園地だと言おうとしたら、マリー・ガガが僕の顔をまじまじと見つめる。


「アヤさんとは上手くいってましたか?」


「ああ、まあ」


「歯切れが悪いですね。きっと自分にはもったいない女性だとでも思ってるのね」


 小学二年生にため息をつかれた。ふざけるな。とんだ茶番劇だ。


「ええねんでええねんで。恋はウブな方が楽しいって、うちのおかんがドラマ見て言ってたから」


「ウブって意味分かってるのかちゃんと? お前らだってウブなんだからな。だいたい僕らはもう大人の関係だし」


 僕は顔を赤らめる。二人は手で口元を抑えてああーと言った。


「彩のことはもうよそう」


「アヤちゃんの写真ないん? 絶対美人やろ? ウダガワの外見に騙されて」


「どうして騙せるんだよ。写真はない。スマホが今なくて」


「忘れたんかいな。あほやな」


 うっせえ。


「彼女さんには優しくせなあかんで。ぼーっとしてるんやから」


「そうよ。お兄さんはちょっとサイコパス気質だから」


「はぁ?」


「女の子はな。貧乏男子嫌いなんやで。でも、言わへんねん。お金もなかったら出したるねん。そんでな、あんたもこのぐらいお金払える男になるんやでって、見せつけて訴えてんねん」


 まぁーとマリー・ガガが目を白黒させて驚いているが、その実笑っている。


「お前らいい加減にしろ!」


 二人がびくっと身を強張らせて動かなくなる。


 サイコパス? 貧乏男子? 好き勝手言いやがって。僕は好きで彩に従っているんだ。彩のためだったらなんでもする。彩の方も僕を養ってでもデートしたいと思っているんだ。彩が僕を求めてくるんだ。そう……僕は彩の父親になるかもしれなかった。




 彩の喘ぎ声が耳元で木霊する。僕は目を閉じる。彩は僕に強要する。さすがにそれはできないと僕は脱ぎかけたズボンをたくし上げるが、彩は僕の頬を張った。テニスラケットで叩かれたかのように強靭なビンタだった。腕の力が目一杯活用されていた。


 僕は彩のベッドに倒れ込む。意識が混濁していた。彩は部屋の奥へ行き、卒業制作で使っているという赤いリボンを取ってきた。それで僕の両腕をベッドの手すりに縛りつけた。ズボンを無理やり脱がされたが、意識は闇に落ちようとしていた。

 彩の布団は太陽の匂いがした。




 僕は困惑した表情の二人から逃げるように離れる。正確には殴りつけてやりたい衝動から逃げたのだ。僕の彩を悪くいう人間は子供だろうと許さない。

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